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医療関係者とエンジニアをつなぐ場をつくる―慶應義塾大学医療政策・管理学教室 医師でデータサイエンティストの二宮英樹氏に聞く(2)

2018年8月3日(金)

医療AIに取り組むトップランナーインタビュー

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 医師でありながらデータサイエンティスト――。慶應義塾大学医療政策・管理学教室で博士課程大学院生として研究を行っている二宮英樹氏は、そんな少し変わった経歴の医師だ。東京大学医学部医学科を卒業後、関西医科大学附属枚方病院脳神経外科に勤務、医療ベンチャー勤務を経て、データサイエンティストとしてIT企業に入社した。ITで医療の“最適化”を進めるため、臨床現場から日常的に得られる医療情報を構造化してデータベースを構築、これらの分析から、患者にとって最適で質の高い医療を実現するためにサービス開発と研究に取り組んでいる。現状の取り組みとその経緯について、二宮氏にお伺いした(全2回の連載)。

 前半の『脊椎外科向けの問診アプリを開発したわけ』はこちら


医療×機械学習論文輪読会や、医療関係者向けの機械学習の勉強会など、医療とエンジニアリングをまたぐ勉強会を開催されていますが、企画の経緯を教えてください。

 私は医師ですが、データサイエンティストとしての勉強をしたいと思い、高校の先輩が経営するデータサイエンスの会社に入社し、ゼロから学びデータサイエンティストとして勤務しています。医師とデータサイエンティストとして働くうちに、ITエンジニアと医療者の乖離が激しいと感じるようになりました。

 例えば高精度で予測ができる良いプログラムをエンジニアが作ったとしても、それだけで臨床現場で使えるわけではありません。精度が60%から90%に上がっても、臨床的には意味がなかったり、現場の課題を何も解決できなかったりすることがあります。要するに機械学習やディープラーニングのエンジニアは現場のニーズや課題を実感することは難しいのです。一方で医療者にとって、医療現場でのニーズと課題は明確です。しかし彼らは、技術に詳しいわけではありません。エンジニアと医療者のバックグラウンドは全く異なりますが、両者が一緒に対話をしていくと、意外にすんなりとお互いの言うことがわかるという経験をしてきました。

 そこで2年ほど前から、医療とデータ、AIといったテーマの勉強会を開催する、といった場づくりをするようになりました。当初は、医療AIの開発者や医師を講師に迎えて講演会をやっていたのですが、もっと深い議論をやりたいと思い、論文輪読会や機械学習の勉強会を企画しました。8月25日には医療者向けに「データ解析Python講座~初診者向けグラフ描画、統計解析、機械学習」を開催します

今年4月からは、医療分野に関連する機械学習ややデータサイエンスの論文を紹介する論文紹介ブログ「Healthcare×DataScience」も運営しています。

 こちらも医療関係者とエンジニアをつなぐ場を作れればと、東京大学教養学部理科Ⅲ類2年生の黒木優佑さんと一緒に運営をしています。ここで紹介する論文は、医療現場での課題解決のヒントになればと探してきています。例えば、整形外科医の知り合いから、「間欠性跛行の鑑別をする技術があると便利」と言われて調べたところ、「歩行動画からSVMを用いて間欠性跛行の鑑別を行った」という論文を見つけて、この論文を紹介するブログ記事にしました

プロフィール

慶應義塾大学医療政策・管理学教室 医師/データサイエンティスト 2013年東京大学医学部医学科卒業。脳神経外科、株式会社メドレーを経て、株式会社トライディアでデータサイエンティストとして、企業向けデータ解析・AI開発に従事。慶應義塾大学医療政策・管理学教室 博士課程でビッグデータ解析や病院のデータベース構築を行う。


慶應義塾大学医療政策・管理学教室 医師でデータサイエンティストの二宮英樹氏に聞く

長倉克枝

長倉克枝 m3.com編集部

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