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日本高血圧学会「Digital Hypertension」推進、学術集会でカンファ開催へーー東大循環器内科の赤澤宏氏に聞く

2019年10月22日(火)

医療AIに取り組むトップランナーインタビュー

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日本高血圧学会は10月25日~27日に東京都内で開催する第42回日本高血圧学会総会の会期中に、同学会初となるIoTやAI、ビッグデータの利活用に特化した「第1回Digital Hypertension Conference」を開催する。代表世話人を務める日本高血圧学会フューチャープラン推進委員会タスクフォースB(新学術領域開拓)ワーキング長/東京大学大学院医学系研究科循環器内科学講師の赤澤宏氏に、その狙いをお伺いした(2019年10月14日にインタビュー)。


Digital hypertension Conference立ち上げの経緯を伺えますか。

高血圧治療には優れた薬があるにもかかわらず、血圧がコントロールされている人が少なく、全高血圧患者の3割にも達しないことが問題となっています。脳卒中や循環器疾患、腎臓疾患を予防するために、高血圧対策は非常に重要です。そこで、日本高血圧学会では伊藤裕理事長(慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科教授)が中心となり、2018年に「日本高血圧学会みらい医療計画」を策定しました。「医療システム」「学術研究」「社会啓発」を三つの柱として、「良い血圧で健やか100年人生」のスローガンの下、様々な活動を展開しています。とくに「学術研究」の中で、人工知能(AI)・ビッグデータの活用やIoTを利用したオンライン診療によって高血圧の予防やコントロールを可能にする「みらい医療」を推進することを目標とし、これを「Digital Hypertension」と名付けました。

「Digital Hypertension」の取り組みのキックオフとして、今回初めてカンファレンスを開催することになりました。

Digital hypertension Conferenceの狙いを伺えますか。

最近は様々な学会でIoTやAIのセッションが企画されています。今年3月にパシフィコ横浜で開催した第83回日本循環器学会学術集会でも、AIのセッションは会場があふれるほどの人が集まりました。学会員の多くがこの領域に興味があり、現状や今後の展開について情報を求めていると感じます。

日本高血圧学会ではDigital Hypertensionをプロジェクトとして推進していくことになりました。学術集会の中のセッションの一つと取り上げるだけでは実効性がないので、本格的なカンファレンスをやることにしました。

AIやビッグデータ活用、IoT活用などは企業主体で技術開発が先行していますが、医療現場のニーズをよく知るのは医療従事者やアカデミアです。企業、医療従事者、アカデミア、行政が膝を寄せ合って、連携しながら進めていく必要があります。企業主体のイベントなども多く開催されていますが、アカデミアの人たちがそこへ参加する機会も少ないと聞きます。そこで、私たちアカデミアの方で門戸を広げて、企業も含めてみなさんに来ていただいて、この領域を共に育てていければと考えています。

今回のDigital Hypertension Conferenceは第1回目で、そのキックオフの位置付けです。まずは、ここで得た情報をそれぞれが自分の専門領域で活用していただくきっかけになればと思っています。

Digital hypertension Conferenceの見どころを伺えますか。

朝から夕方まで一日かけて、4つのセッションと企業共催の2つのセミナーがあります(プログラムはこちら)。

セッション1は「新学術Digital Hypertensionが目指す未来」として総論的な内容になっています。アカデミア、製薬企業、経済産業省の方それぞれの発表があります。セッション2は「ビッグデータの活用で大きく変わる高血圧診療の未来」として、リアルワールドデータを活用した研究などの発表があります。

血圧は数字なのでデータとして扱いやすく、IoTの活用でよりデータ収集がしやすくなります。そこでセッション3は「IoT/IoHの活用で変わる高血圧診療の未来」として、アカデミアの他、機器メーカーや厚生労働省の方による発表があります。医療分野での利活用が期待されるAIは、ゲノム情報や医療情報といったビッグデータの高速かつ高精度な処理を可能とします。セッション4では「AIの活用で変わる高血圧診療の未来」としてAI活用の現状と課題について発表があります。

Digital hypertensionはカンファレンス以外ではどのような活動を考えられているのでしょうか。

カンファレンス開催が目的ではなく、最終的には高血圧診療に変革を導入したいと考えています。血圧は数値として計測されるので、デジタルやIoTとの相性が良いです。また最近ではスマートホンやウェアラブルデバイスでデータ収集をするアプリも開発されています。学会としてPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)を収集するとともに診療に役立てることができるようなアプリを開発し、それを使った臨床研究を推進していければと考えています。従来の臨床研究では分からないことが、リアルワールドデータの収集と解析から明らかになると期待しています。新しいテクノロジーをエビデンス構築に生かし、診療の質を向上させ、さらには高精度な医療つまりPrecision Medicineの実現を目指します。

ただ、高血圧のある人は他の疾患があることも多く、こうした取り組みは高血圧領域だけで進められるものではありません。将来的には他の内科系の学会とも連携して進めていければと考えています。

日本高血圧学会でのDigital hypertensionの推進体制を伺えますか。

私がワーキング長を務める日本高血圧学会フューチャープラン推進委員会タスクフォースB(新学術領域開拓)は当初は9人のメンバーでしたが、今年春にDigital hypertensionを推進するとなって、こうした領域に詳しい先生方にも参加していただくことになりました。「みらい医療計画」全体に関わるフューチャープラン推進委員会の中で、本ワーキングがプロジェクトを推進する体制となっています。

今後のカンファレンスの予定を教えてください。

カンファレンス自体は今後も実施することが決まっています。今回は日本高血圧学会総会との同時開催です。日本高血圧学会の学会員にも参加していただきたいですし、製薬や電機、情報・通信などの企業の方や政府・行政の方々にも来ていただきたいです。第1回のカンファレンスの様子を見て、来年度の開催時期や場所を決めたいと思います。

長倉克枝

長倉克枝 m3.com編集部

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