医科・歯科共同で診療を行う総合クリニックである東京国際クリニックはこのたび、胸部CT等を対象とした画像診断支援AIの臨床研究を実施した。このAIは胸部CT画像から肺結節候補の箇所を指し示す機能を持つ。医療AIの導入によって臨床現場は、そして受診者の反応はどのように変わったのだろうか。東京国際クリニック院長の高橋通氏と放射線技師長である松本司氏に、医療AI導入による健診施設の変化を伺った。
施設の特長についてお伺いできますか。
高橋通(以下、高橋) 当院は、医科・歯科共同で診療する総合クリニックです。歯に関する問題も全身疾患として捉えていこうという考えのもと、医科と歯科の連携を以前から強化しています。また予防医療にも力を入れており、会員制人間ドックの他、一般の方向け、さらには海外の方向けにも人間ドックを提供しています。全身を検査する人間ドックでは、一つの画像に対して、必ずそれぞれの専門医が複数人でチェックするようにしています。
今回、画像診断支援AIの臨床研究に参加された動機についてお伺いできますか。
高橋 AIを当院でも導入してみたいと考えていたところ、ちょうど臨床研究のお話をいただいたため、まずどういうものかを確認するために参加いたしました。また、AIを導入されているクリニックはまだそんなに多くないため、AIがきちんと機能するのであれば将来的に当院の差別化が図れるのではないかという期待もありました。
実際に胸部CTの画像診断支援ソフトウェアを活用してみていかがでしたか。
高橋 画像診断支援ソフトウェアは、所見があれば丸印をつけてくれます。これを見せながら受診者様に結果の説明を行ったのですが、反応がかなりよかったですね。丸1日かかる長い人間ドックの最後に説明するので、受診者様は少しお疲れになられているのですが、解析結果をお見せすると少し身を乗り出されます。
そういう受診者様の表情の変化を見ると、AIの導入が人間ドックのリピーターの増加につながるかもしれないという期待が持てますね。また臨床の観点でも、ソフトウェアは、専門医以外でも分かるような異常所見はもちろんのこと、とても小さなすりガラス陰影にも丸印をしっかりつけてくれるので、これはすごいなと思います。
松本司(以下、松本) AIの導入に関して、技師サイドからするとデメリットは1つもないです。画像を撮った結果はやはり気になりますが、その場ですぐにAIの解析がついてくれるとリアルタイムで勉強できますし、他の技師との間で話し合いができたりもするので助かります。また今回の臨床研究においては、特に何か特別な準備は不要でした。
一方で、AIを使用してみて感じた課題点はありますか?
松本 今回は肺結節のソフトウェアでしたが、今後、肺野以外に写っている乳腺の腫瘤や、リンパ腺などに関しても検出できるようになるといいですね。また、肺以外の、大腸CTなどに対するAIもあったらいいと思います。
高橋 今AIは予防医療で活躍が始まっているようですが、データ量が膨大になる急性期医療で使えるようになる事がとても大事かなと思います。放射線科医が見る画像の量も3D化により非常に多くなっており、負担が増えているという現状があると伺っているので、「急性期のこの患者さんの画像を至急見てほしい」という時に、AIでサポートがあればという期待はとても高いのではないかと思います。
AIの使いこなし方について、お考えをお聞かせください。
高橋 今の心電図装置は自動解析機能があり、QT間隔何ミリセカンドとか右軸偏位などの所見が心電図の波形と一緒に出てきます。循環器が専門でない先生方は、そこに書いてあるST低下や心室性期外収縮などといった所見を見て循環器の医師に相談されたりもします。それと
同じ感覚で、時間を要さずにチェックができるという点で、AIをレントゲンやCTに導入されるとよいのではないかと思います。
また当院は遠隔読影も利用していますが、現状、遠隔読影ではAIを使用していません。今後、A Iや遠隔読影の所見をお互いに補完し合うこともあるかもしれません。そういったダブルチェックの意味でも使えるのではと思いますね。
現在、肺結節や脳動脈瘤等を対象とした画像診断支援AIの無償トライアルを行っています。 下記のボタンより詳細をご確認いただけます。