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再入院率を減らす最適なアフターケアとは

2020年6月10日(水)

米国の医療保険制度改革法(通称オバマケア)では、保健福祉省の公的保険制度運営センター(略称:CMS)が、予想再入院率と比較して過剰な再入院数と見なした場合、病院に低いレートで払い戻しを義務づけている。そして、米国病院協会(AHA)によると、2012年10月のプログラム開始以来、病院は合計約19億ドルの払い戻しをしたことが分かっている。

このような背景があり、全国の病院組織は過去数年にわたって、認定在宅医療機関と連携するなどしてさまざまな再入院削減プログラムを実施し、患者の経過を改善して払い戻しのコストを抑えてきた。 再入院削減プログラムでは、遠隔医療プログラムや退院後の電話、そして自宅通話プログラムなどを用い、専門分野の垣根にとらわれない症例管理や退院計画プログラムを実施して、プライマリケア診療との連携も行っている。

これらのプログラムのうちどれが最も効果的なのか。ニューヨーク州立大学ビンガムトン校の研究者であるミシェル・サマーズ博士は、ニューヨーク州北部の53の郡にまたがる94の施設で、心不全もしくは肺炎で入院した患者を対象に調査を行った。患者の疾患を心不全と肺炎に限定したのは、この2つの病気が最も一般的に入院を必要とする病気だからである。研究結果は、『Professional Case Management:』の2月号に掲載された。

最初にサマーズ博士は、病院が使用した再入院削減プログラムに関するデータを収集した。さまざまな専門分野のスタッフで結成された症例管理チームの場合は、チームに登録された看護師もしくは上級診療看護師(大学院看護教育を持つ看護師)がいるかどうか、またはチームを率いているかを特定した。次に、病院が使用する再入院削減プログラムのタイプと数、そして施設の再入院と払い戻しの結果との関係を分析した。

すると、主治医の不足地域にある病院での払い戻しを減らすための対策として、自宅への電話が最も大きな影響を与えたことがわかった。また、在宅医療機関との連携、遠隔医療の使用、退院後の患者のフォローアップのための自宅訪問を実施することで、心不全または肺炎による入院患者の再入院率が低下したことも分かった。さらに、さまざまな専門分野のスタッフで結成された症例管理チームに上級診療看護師が加わることで再入院率の低下につながることもわかった。

サマーズ博士は今回の研究成果について、「退院後のケアのために、診療看護師か医師が患者の家を訪れるという『ハウスコールプログラム』が良い結果を与えるのが分かったことが、特に重要です」と語る。サマーズ博士はさらに、家庭訪問の介入プログラムを設計し、テストすることを計画しており、特に病院が患者の自宅と通話可能なプログラムを開発することが必要だと考えている。

荒川友加理

荒川友加理

1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。