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臨床と研究の傍ら1日2時間3か月間AIを学ぶ―東京大学医学部附属病院循環器内科大学院生・加門辰也氏に聞く

2020年4月2日(木)

医師ら医療者自身がデータやプログラムを扱い、医療データを活用する取り組みが進みつつある。本シリーズでは、データサイエンスやAIなどを学ぶ医師ら医療者に、その具体的な取り組みについてお伺いします。

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東京大学医学部附属病院では今年1月から、循環器内科助教の小寺聡氏が主宰する、AI(人工知能)の勉強会が開催されている(小寺氏については『医師がゼロからAI学ぶ、半年で論文投稿―東京大学医学部附属病院循環器内科助教の小寺聡氏講演レポート』参照)。勉強会参加者は、同病院に勤務する医師ら大学院生。参加した2人の医師に、この勉強会を通じて得た経験についてお伺いした。1回目は、1月から3月まで勉強会に参加した循環器内科医の加門辰也氏にお伺いした(2020年3月25日にインタビュー)。

先生がAIの勉強会に参加された経緯をお伺いできますか。

機械学習や深層学習といったAIの勉強をしたいと思っていましたが、今の医療現場で必須ということもなく、また忙しくて学ぶ機会がありませんでした。でも、いつかはやらないといけないと思っていたところ、上司である小寺先生が勉強会を開催されるということで、一人で勉強するよりもハードルが低いかと、参加することにしました。AIは、今は必須ということはないですが、今後の医療には入ってくるでしょう。勉強して知識がある方が、今後AIが医療に入ってきても不安を払拭することになると思いました。

具体的にどのように進められたのでしょうか。

勉強会は、1月から3月末まで毎週月曜日午後6時半から1〜1.5時間開催されました。毎週課題が出るのですが、自身が持っている臨床データを使って学習させ、Pythonで機械学習モデルを作ります。

私はプログラミング経験がこれまでなかったので、大変苦労しました。小寺先生から薦められた初心者用のPythonによるAIアプリの教科書とPythonのプログラミングコードの教科書を購入し、コードを打ち込みながら学習しました。ただ単語ひとつひとつも専門用語ばかりで、コードもエラーが出るたびに中断し、Googleで検索をしたり、一緒に勉強をしているチームの先生に聞いたりしながら学習を進めました。一人では確実に挫折していたと思いますが、勉強会があったのと一緒に勉強している先生方がいたので、なんとか続けられました。

小寺先生からは、毎日2時間は学習するようにと言われましたが、通常の臨床業務や研究業務の合間に時間を作るのは大変でした。忙しい時期は学習できない日もありましたが、月曜日に勉強会があり、発表しないといけないので夜や隙間時間、週末を活用して勉強しました。勉強会の参加者は当初は二十数人いましたが、最終的には半分くらいになりました。みな医師として臨床業務をしながら大学院生として研究業務もしているので、その上でAIの学習を続けるのは大変です。

先生が作られた機械学習のモデルはどのようなものでしょうか。

勉強会の参加者の多くは 普段の研究で臨床データを使っています。私は健康診断データを使って研究をしていますので今回このデータを使って機械学習モデルを作りました。具体的には健診データから将来の動脈硬化などの疾患を予測するモデルです。1500人の健診データを使って機械学習モデルを作り、別の1500人のデータで評価をしました 私が使ったのは健診データの数値データですが他の先生はX線画像などの画像データなども使っていました。私が普段使っているパソコンでは学習データに画像を使うと処理に時間がかかり大変でしたが数値データは比較的処理に時間がかからないので通常のパソコンでも扱いやすいです。

予測モデルはそのまま研究になりそうですね。

はい。ほかの統計手法による予測モデルと予測精度を比較して、学会発表や論文発表できればと思っています。こうした、少し頑張れば手が届きそうな目標があると、AIの学習のモチベーションになります。

AIの学習は、実臨床にはどのように役立てられますでしょうか?

最終的にはもちろん医師の判断が必要ですが、今後循環器領域では、心電図、X線、エコー、CTなどの画像診断支援にAIが入ってくると考えられます。また、カルテの情報や検査データから、診断や処方の支援をすることもできるようになると思います。こうして、将来臨床にAIが入ってくるときに、AIの知識を持っていたほうが、その結果を使いこなしやすくなると思います。また、AIの開発や臨床で使っていくには、臨床とAIの橋渡しをする、両方の知識がある人が必要になります。

今後はどのようにAIを使っていかれますか。

私は普段は弁膜症や虚血性疾患、予防医学などに臨床と研究で携わっています。これらのデータを用いてAIを使って臨床研究を行いたいと考えています。具体的には、健診での採血データから数年後の疾患を機械学習で予測する研究や心電図のデータから様々な心疾患を予測する研究を考えています。すぐに臨床応用できるわけではないですがこうした論文や学会発表を積み重ねていくことでエビデンスを作っていければと思います。

プロフィール

kamon

加門辰也(かもんたつや)
東京大学医学部附属病院循環器内科大学院生
2013年弘前大学医学部医学科卒業。東京逓信病院で初期研修、循環器内科後期研修を修了。2018年東京大学医学部附属病院循環器内科大学院入学。日本内科学会認定医、循環器内科専門医。AIに関しては全くの初心者だが、上司の誘いでAI研究を開始し、悪戦苦闘しながら勉強中。

長倉克枝

長倉克枝 m3.com編集部