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AI Lab プロジェクト医療×AIの発展にご協力いただける方を募集しています

内視鏡画像から疾患検出、犬猫の眼底画像を解析…領域広がる医療AI ―轟・加藤の「医療AI トレンドを追う」(18)

2020年9月25日(金)

アイリス株式会社AIエンジニアの轟佳大氏が、眼科専門医でデジタルハリウッド大学大学院客員教授の加藤浩晃氏と共に、企業や大学における医療AI開発の取り組みを紹介する連載コラムです。取り上げてほしいテーマや質問事項、記事の感想などございましたら、「m3com-editors@m3.com」までメールをお送りください。

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ななめ読み
・今回用いる資料は筆者である轟が作成した「AI×医用画像の現状と可能性 2020年上半期版」のスライドをもとにしています。
・2回に分けて2020年上半期にプレスリリースなどで発表されたAI×医用画像に関する取り組みの中から自身が関心を抱いた事例を新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連とその他の関連に分けてご紹介します。


毎年年末に「その年のAI×医用画像の総集編」と称して轟がまとめ、無料公開をしている「AI×医用画像の現状と可能性」という医療AIに関するまとめスライドがあります。2020年上半期は各社の医療AIに対する取り組みが活発になったことや、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策で新たな医療AIの取り組みを発表した会社が増えたことなどを受けて、上半期版 & 下半期版に分けてまとめスライドを発表することにしました。すでに「AI×医用画像の現状と可能性 2020年上半期版」は無料公開済みで、今回はこちらのなかから注目する取り組みを解説したいと思います。

2020年上半期の医療AIの取り組み

2020年上半期は新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行により、COVID-19対策の事業や研究に多くのフォーカスが当たっていましたが、それ以外にもさまざまな事業や研究が進展を見せた期間でもありました。多くの学会が軒並み延期やオンライン開催になった影響で各社の進展が表に出にくかったのですが、各社の医療AIにおける取り組みは止まることなく研究開発され、事業化されている印象があります。今回はそのなかでもいくつかの注目したい事業や研究をご紹介します。

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オリンパスや富士フイルムであらたに発表・発売された医療AIの製品

オリンパス株式会社は昨年に薬事承認を発表・販売開始した、EndoBRAINの2号機であるEndoBRAIN-EYEの国内販売を2020年5月下旬から開始することを発表しました。 この製品はEndoBRAINと同様に大腸内視鏡病変検出AIですが、EndoBRAINには搭載していなかった深層学習技術を搭載しています。EndoBRAINは機械学習を用いた医療機器で、医療機器クラス3(疾患鑑別用内視鏡画像診断支援プログラム)。対象病変があった際に候補検出とA Iによる分類結果まで返していました。一方、EndoBRAIN-EYEは深層学習を用いた医療機器で、医療機器クラス2(病変検出用内視鏡画像診断支援プログラム)。対象病変があった際に医師にアラート音でお知らせをする機能へと改変されました。

富士フイルム株式会社は自社のAIプラットフォームであるSYNAPSE SAI viewer向けのアプリケーションとしてAIを用いた胸部CT画像内の肺結節検出と形状分析を行うシステムを2020年6月に販売開始しました。こちらのシステムは胸部CT画像に対する肺結節候補部分の検出や形状分析に加えて、所見文の作成も自動的に行うことができる仕様になっています。

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クラウド型、犬猫用など、新たな医療AIサービスの可能性も

自治医科大学発のスタートアップであるDeepEyeVision株式会社はクラウド型のAI画像解析サービスを発表しました。このサービスはユーザーである医師が解析してほしい眼底画像をDeepEyeVision社製のクラウドサービスに送信すると、AIが画像に対して解析処理を行い、その結果をもとにDeepEyeVisionに携わっている医師が最終的な診断結果を生成し、ユーザーである医師に返すというフローです。現在は糖尿病網膜症のフェーズ分類や円錐角膜が診断可能となっています。

株式会社メニコンの子会社である株式会社メニワンは、昨年9月から犬猫の眼底画像解析AIサービスを獣医師向けに提供し始めています。こちらもメニワン社製のクラウドサービスに獣医師が画像を送信することで、メニワン社のAIが画像解析を行い、類似画像や最終的なレポートを返してくれるというものです。コンタクトレンズ商品などで有名なメニコンが人間向けの医療AIではなく、犬猫向けの眼底画像解析サービスを行っている点が非常に興味深いと感じるサービスでした。

プラスマン合同会社は株式会社PSPと協業を行い、CT画像に映る肺結節を表示するAI解析技術をワークステーションの一機能として提供開始しました。

このワークステーションは薬事認証されており、ワークステーションで肺結節を見つける際の機能のひとつとしてAIによる表示が使えるようになっています。

以上、いかがでしたでしょうか。 各社で医療機器の認証や承認を取得する事例がとても増えており、今後もどんどん増えていくことが予想されます。鑑別疾患まで行えるようなAI機能を用いた医療機器を開発しAI医療機器として打ち出すか、既存の医療機器の機能のひとつとして鑑別疾患はしないAI技術を組み込むかなど各社の狙いなども段々と多くのバリエーションが出てきました。 また下半期も引き続き追いかけていこうと思います。

では、次回もお楽しみに。

轟佳大

轟佳大

アイリス株式会社 AIエンジニア。1992年生まれ、立命館大学大学院 情報理工学研究科修了。大学・大学院を通して医療AIの研究を行い、大学院在学中にはシンガポール国立情報研究所にて医療AIの研究に従事。最新論文は医工学分野のトップカンファレンスに採択された。研究や仕事の傍ら、医学生や医師、社会人向けに医療AIの講演などを行っており、スライド「AI×医用画像の現状と可能性」(http://ur0.work/SfKm)は1万viewを超える。医療と最新テクノロジーとアイスが好き。

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