アイリス株式会社AIエンジニアの轟佳大氏が、眼科専門医でデジタルハリウッド大学大学院客員教授の加藤浩晃氏と共に、企業や大学における医療AI開発の取り組みを紹介する連載コラムです。取り上げてほしいテーマや質問事項、記事の感想などございましたら、「m3com-editors@m3.com」までメールをお送りください。
ななめ読み
- 2019年7月時点の医療AI開発に関する学会の動向をまとめた。
今回は、学会とその他研究機関や大学との連携による医療AI開発に関する動向をまとめてみます。日々多くの情報が更新されていく中で、現状どのようになっているのかをリリース日およびその後の動きなどを踏まえ、客観的な把握を試みます。もし「この学会に関して書いていない」などありましたら教えていただけると幸いです。
今、日本医学会の分科会は132学会あります。これらの学会の中で現在、医療AIの開発に携わっているのは日本内科学会・日本内視鏡外科学会・日本眼科学会・日本皮膚科学会・日本病理学会・日本超音波医学会・日本医学放射線学会・日本消化器内視鏡学会の8学会です。各学会が各々、AIに関する開発や画像提供に関する活動を行っています。
中でも医療ビッグデータ研究センターは、「AMED臨床研究等ICT基盤構築研究事業」のAI研究開発プロジェクトにて、日本眼科学会・日本皮膚科学会・日本病理学会・日本超音波医学会・日本医学放射線学会・日本消化器内視鏡学会と研究提携しており、ナショナルデータベースの構築や、支援システムの開発を目指しています。またこのデータベース構築により収集された画像を用いて、様々な大学との連携を通して、AIを用いた画像解析を行う研究連携も進んでいます。
学会にて収集された画像をデータベースとして活用した研究成果も国内外の様々な学会にて研究発表されています。例えば第4回に掲載した病理画像に関する研究はこのプロジェクトで集められた画像を用いた研究です。
日本内視鏡外科学会は大分大学と福岡工業大学、そしてオリンパスが行っている「内視鏡外科手術を補助するソフトウェア開発に関する共同研究」にて学会が保有する手術動画を提供しています。
日本内科学会は、2019年4月に開催された第116回講演会で、自治医科大学の永井良三学長による発表で、AI開発の現状に関する情報が公開され、今夏以降、学会員は無料で使用できることを発表しました。
現状NIHが公開しているようなオープンデータベースは日本国内に存在しないものの、今後の展開次第ではセミオープン、オープンデータセットとして使用できる可能性もあります。世界的にも上質な画像を元に収集されているオープンデータセットは数少なく、また学会などがAI開発に賛同し、協力を始めている現状は産学の垣根を越え、また研究を通して、新たな技術を推し進めているようにも見えます。
以上、今回は学会が携わっている医療AI開発に関しての現状を簡潔にまとめてみました。次回もお楽しみに。
轟佳大
アイリス株式会社 AIエンジニア。1992年生まれ、立命館大学大学院 情報理工学研究科修了。大学・大学院を通して医療AIの研究を行い、大学院在学中にはシンガポール国立情報研究所にて医療AIの研究に従事。最新論文は医工学分野のトップカンファレンスに採択された。研究や仕事の傍ら、医学生や医師、社会人向けに医療AIの講演などを行っており、スライド「AI×医用画像の現状と可能性」(http://ur0.work/SfKm)は1万viewを超える。医療と最新テクノロジーとアイスが好き。