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AI Lab プロジェクト医療×AIの発展にご協力いただける方を募集しています

深層学習を活用した脳MRI診断支援プログラムが薬事承認取得―轟・加藤の「医療AI トレンドを追う」(10)

2019年11月26日(火)

アイリス株式会社AIエンジニアの轟佳大氏が、眼科専門医でデジタルハリウッド大学大学院客員教授の加藤浩晃氏と共に、企業や大学における医療AI開発の取り組みを紹介する連載コラムです。取り上げてほしいテーマや質問事項、記事の感想などございましたら、「m3com-editors@m3.com」までメールをお送りください。

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ななめ読み
- 医療AIベンチャーのエルピクセル社が開発した医用画像解析ソフトウェア「EIRL aneurysm(アニュリズム)」がプログラム医療機器として薬事承認を取得したことを10月15日に発表した。
- 脳MRI画像から深層学習を用いて脳動脈瘤候補を検出する機能を持つ。
- 医師単独で読影を行った場合は感度68.2%だったのに対し、EIRL aneurysmでは感度77.2%だった。


10月15日、深層学習(ディープラーニング)を用いたプログラム医療機器である「EIRL aneurysm(アニュリズム)」が薬事承認されたとエルピクセル社から発表されました。2019年3月にオリンパスから発表された内視鏡診断支援AI「EndoBRAIN」(第1回コラム参照)に続き、人工知能(AI)技術を搭載した医療機器としては2例目となります。

「深層学習」を用いたプログラム医療機器が初めて薬事承認

では、両プログラム医療機器の違いはどこにあるのでしょうか。EndoBrainは機械学習手法である「サポートベクターマシン」を用いた初めてのプログラム医療機器である一方、EIRL aneurysmは機械学習の一種である深層学習を用いた初めてのプログラム医療機器です。現状、AIと呼ばれる技術は機械学習を主に用いたものの総称とされています。そのため、EndoBrainは「AIを用いた初めてのプログラム医療機器」、そしてEIRL aneurysmは「AIの中でも深層学習手法を用いた初めてのプログラム医療機器」と表現されました。

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プレスリリースより引用

医療機器には「医療機器規制国際整合化会議(GHTF)」にて定められたクラス分類が世界基準で存在しており、その基準をもととして日本における医療機器クラスが設けられています。医療機器クラスはⅠ〜Ⅳに分けられ、数字が大きくなるほどに人の生命および健康に重大な影響を与えうることを示しています (クラスⅠはX線フィルムなど、クラスⅡは補聴器など、クラスⅢは人工呼吸器など、クラスⅣはペースメーカーなど)。

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厚生労働省 資料「医療機器の分類と規制(https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/02/dl/s0227-5h_0012.pdf)」より引用

では、EndoBrainとEIRL aneurysmはどのクラスとして承認を得たのでしょうか。EndoBRAINはクラスⅢで一般的名称は「診断支援プログラム」、EIRL aneurysmはクラスⅡで一般的名称は「ワークステーションシステム」と定められました。(詳細は、共にこの記事を執筆している加藤浩晃先生が書いたブログを参照ください)

EIRL aneurysmは何をするの?

EIRL aneurysmは入力された脳MRI画像から脳動脈瘤候補を見つけ、マーキングして出力する機能をもちます。プレスリリースによると、医師単独で読影した場合の感度68.2%と比べ、EIRL aneurysmを用いて読影した場合は感度77.2%となり、診断精度が向上したといいます。エルピクセル社は、2018年にはスマート脳ドックにて使われる読影サポートAIの共同研究を行うことを発表しており、脳ドックの普及に力を入れていることが読み取れます。このように日本で2例目のAIを用いたプログラム医療機器が登場し、医療のデジタル化はますます盛り上がっていくと思われます。

第10回もありがとうございました!今回は日本で2例目のAI医療機器であるEIRL aneurysmの薬事承認に関して書きました。私は1例目、2例目ともにとても素晴らしい成果だと感じました。これは日本でもいよいよ医療AIが医療機器として登場し始めることを意味する発表だといえるでしょう。このようなAI医療機器が今後どのように使われていくのかも引き続き追いかけたいと思います。ではまた次回もお楽しみに!

轟佳大

轟佳大

アイリス株式会社 AIエンジニア。1992年生まれ、立命館大学大学院 情報理工学研究科修了。大学・大学院を通して医療AIの研究を行い、大学院在学中にはシンガポール国立情報研究所にて医療AIの研究に従事。最新論文は医工学分野のトップカンファレンスに採択された。研究や仕事の傍ら、医学生や医師、社会人向けに医療AIの講演などを行っており、スライド「AI×医用画像の現状と可能性」(http://ur0.work/SfKm)は1万viewを超える。医療と最新テクノロジーとアイスが好き。

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