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AI Lab プロジェクト医療×AIの発展にご協力いただける方を募集しています

「医療AIをグレさせずに育てる」ためには?学会がGL作成ー京大・医療情報学教授の黒田知宏氏が講演

2019年5月25日(土)

日本医療研究開発機構(AMED)が2019年4月7日に開催した「平成30年度臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業成果報告会」のレポートです。

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(訂正)タイトルを「「医療AIをグレずに育てる」ためには?」から「「医療AIをグレさせずに育てる」ためには?」に訂正しました。 (2019/5/27)


医療分野でのAI(人工知能)開発に向けた研究が増える中、AI開発に必要な医療データ収集の活用を適切に進めるためのガイドライン策定を日本医療情報学会が進めている。日本医療研究開発機構(AMED)が4月7日に開催した「平成30年度臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業成果報告会」で京都大学大学院医学系研究科医療情報学教授の黒田知宏氏が「医療AIをグレさせずに育てるために:医療データ収集と活用のガイドライン」と題して講演し、同学会が作成を進めるガイドラインを紹介した(講演の動画はAMEDのウェブサイトから閲覧できる)。

医療機関の医療情報を収集したり活用したりする臨床研究が増えているが、こうした臨床研究には、医師ら医療関係者の他、技師やシステム担当者、患者ら複数のステークホルダーが関与する。特に、情報システムについては、医療機関のセキュリティ対策、研究プロジェクト終了後の運用、法律やガイドラインとの適合性、調達など、多様な知見が必要となる。

同学会では、こうした臨床研究を実施するにあたり、計画時点で必要な要件などを今年3月、暫定版として「医療画像データ収集事業に用いる情報システム構築ガイドライン(案)」を取りまとめた。黒田氏は「医療機関の情報システムのセキュリティを侵さず、医療機関に過剰な負担をかけないといった、(臨床研究を進める過程で)誰もが不幸にならないようにするために作っている」と説明する。同ガイドラインの目次は以下の通り。


1.本文書について
2.システムの基本構造
 2.1 基本的考え方
 2.2 臨床情報収集システムの基本構造
 2.3 臨床情報収集システムのバリエーション
 2.4 次世代医療基盤法の活用
3.研究計画立案時の注意
 3.1 収集データの種類と取扱
 3.2 データ収集に関わる体制整備と施設側状況の確認
4.契約と責任分界
 4.1 調達と責任分界
 4.2 運用時の責任分界
 4.3 研究終了時の責任分界
5.研究立案の参考になる規格等
 5.1 各種医用画像を扱うための規格
 5.2 画像と検査等の情報をまとめて扱うための規格
6.終わりに


現状実施されている臨床情報収集システムの構築をする中で黒田氏らが課題と感じてきた内容も盛り込まれた。例えば、高額なシステムを購入する場合は世界貿易機関(WTO)のルールによって入札がなされる政府調達となり、入札から納品まで最低4か月、通常半年から1年はかかる。一方、多くの研究事業では調達期間は盛り込まず単年度での実施を想定しているが「単年度プロジェクトはあってはいけない。システム構築だけで時間が経ってしまい、データ収集までできなくなってしまう」(黒田氏)とした。

ほかに、研究立案から施設ごとに異なる条件、標準化やベンダーとの調整、設置機器の費用分担と責任分界、研究期間終了後の運用継続等の調整事項など、導入に向けて必要となる調整事項もまとまっている。

黒田氏は、こうしたガイドラインをまとめた経緯として、「データベース事業が現場を追い詰めている」と指摘。データベース構築に必要なデータ入力は、日常の診療に必要なデータ入力とは異なり、臨床現場の医師らの業務を圧迫している現状を紹介した。そのうえで、「データ入力から人手の作業を省くこと」「現場でのデータ入力のインセンティブ」が必要だとした。

長倉克枝

長倉克枝 m3.com編集部