日本医療研究開発機構(AMED)が2019年4月7日に開催した「平成30年度臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業成果報告会」のレポートです。
日本医療研究開発機構(AMED)が4月7日に開催した「平成30年度臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業成果報告会」で、日本消化器内視鏡学会理事長特別補佐で京都第二赤十字病院消化器内科副部長の田中聖人氏が登壇し、消化器内視鏡画像の収集と、それらを用いた画像診断支援AIの開発に向けた同学会の取り組みを紹介した(『「学会が医療情報管理のプラットフォームに」――日本消化器内視鏡学会・田中聖人氏に聞く』『AI研究、出口志向が必要――日本消化器内視鏡学会・田中聖人氏に聞く』参照)。
同学会では画像診断支援AI開発向け、内視鏡画像を収集、統合するため、データ収集とその基盤構築を進めている。昨年3月までに消化器内視鏡画像約172万枚を収集、「情報収集基盤はできた」(田中氏)という。収集した画像をもとに、医師ら臨床サイドと、国立情報学研究所などの情報系研究者が共同研究を進めている。昨年度の研究項目は以下の通り。
田中氏は胃がんのAI診断支援の精度向上といった個別の研究では大学などそれぞれの機関での研究成果は上がっているとした一方で、個別の研究とは別に学会として行うべきことを紹介した。
学会として取り組むこととして具体的に田中氏が挙げたのが、画像の収集やデータの作成、データベース構築のための支援ツールの開発だ。例えば、ディープラーニング(深層学習)などの機械学習で画像診断支援AIを開発するには、あらかじめ病変部位や診断などの情報が付与された(アノテーション)画像を大量に作成し、これらをもとに学習を行う必要があり、アノテーションなどのデータ作成には医師らの多大な労力がかかっている。そこで、同学会では、アノテーション支援ツールや、AI開発向けに内視鏡画像の所見を入力するツール、臨床向けに作成した非構造化テキストデータを、構造化するツールなどの開発も進めていると紹介した。
また、AIによる内視鏡画像診断支援ツールの研究開発が国内外で多数行われているが、学習に使ったデータや評価用のデータによってAIの精度が大きくばらつくという課題がある。内視鏡画像診断支援ツールを臨床現場で活用するために横断的に評価する指標は現状はない。そこで田中氏は、同学会では、こうした内視鏡画像診断支援ツールの標準評価用データセットの作成を進めていくと説明した。作成する標準評価用データセットでは、詳細分類や最終診断となる病理情報も付加していく計画という。
長倉克枝 m3.com編集部