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「ロボット使用で合併症が減るわけではない」ー藤田医科大学消化器外科教授・宇山一朗氏

2019年2月6日(水)

2019年1月26日に開催された第11回日本ロボット外科学会学術集会のレポートです。

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2019年1月26日に名古屋市で開催された第11回日本ロボット外科学会学術集会で、2009年から手術支援ロボット「ダビンチ」を用いた手術を行ってきた藤田医科大学消化器外科教授の宇山一朗氏が「消化器外科領域におけるロボット手術の現状と将来展望」と題して講演し、「ロボットを使用しても合併症が減るというわけではない。合併症が起こる原因を追究し、原因を排除する術式を検討する。ロボット支援手術は再現性が高い」と指摘した(『手術支援ロボットによる腹腔鏡手術で合併症減少、6月からリアルワールドデータで検証―藤田保健衛生大学・宇山一朗氏』も参照)。

術創が小さく、合併症が少ない手術をロボットで目指す

上部消化器外科が専門の宇山氏は、20009年からダビンチを用いてロボット支援手術を行ってきた。藤田医科大学では消化管外科領域で2009年からこれまでに、胃切除を403例、食道切除を88例など、計756例のロボット支援手術を行っている。

宇山氏は、術創が小さく、合併症が少ない手術を目指して、ロボット支援手術を行っているとした。では腹腔鏡手術はどうか。小さい術創であれば全身合併症を減らせる可能性はあるが、局所操作性の低下という欠点があるため、局所合併症は開腹手術と同等か多くなると言う。そこで、腹腔鏡手術での動作制限を克服するために、ロボット支援手術が有用だと宇山氏は言う。

ロボット支援手術の実例について、まず宇山氏は胃がん手術について紹介した。目指すべき胃がん手術のゴールとして、がんの完全切除、膵液漏ゼロ、合併症ゼロとした上で、ロボット支援手術では、手ぶれ防止、関節機能、拡大視効果などがあるため、膵液漏の原因となる膵臓への圧迫や熱損傷を避けられるとした。実際、宇山氏らが2014年から先進医療Bとして実施したロボット支援手術による胃がん手術では、グレード3以上の合併症は2.45%しか起こらなかったという。

2018年4月の診療報酬改定で、ロボット支援手術による胃切除も点数がついたが、宇山氏は今後は合併症軽減などのロボット支援手術の有意性を検証し、さらに加算を取っていくとした。日本内視鏡学会とナショナル・クリニカル・データベース(NCD)では、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術の症例を収集し、検証をしていくという。

再現性が高いロボット支援手術

続いて宇山氏は、ロボット支援手術による食道がん手術について紹介をした。食道がん手術では、根治、反回神経麻痺ゼロ、肺炎ゼロ、縫合不全ゼロを目標としている。

藤田医科大学では2006年から食道がんの腹腔鏡手術を実施しているが、当初左反回神経麻痺が高率で発生したという。そこで、麻痺の発生を軽減できないかと、2009年からロボット支援手術を導入した。さらに、新たな手術のコンセプトとして新腹臥位でのロボット支援手術を行ったところ、2018年4月から2019年1月までに実施された17例で、左半回神経麻痺の発生は2例と大きく減った。そこで、このコンセプトでの手術は正しいとし、通常の腹腔鏡手術でも行うことができるが、ロボット支援手術であれば再現性が高く行うことができるとした。

最後に宇山氏は、「ロボットを使用しても合併症が減るわけではない。合併症が起こる原因を追究し、原因を排除する術式を検討する。その術式をロボットを使い、再現性を持って行う」として、ロボット支援手術の意義について強調した。

長倉克枝

長倉克枝 m3.com編集部