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生物医療科学の研究を行う米・スクリップス研究所は、安静時心拍数(RHR)や睡眠データなどの生体データを収集できるウェアラブルセンサーを用いる事で、インフルエンザの感染拡大地域の予測に貢献できることを示した。この研究成果は1月16日、『The LANCET Digital Health』に「Harnessing wearable device data to improve state-level real-time surveillance of influenza-like illness in the USA: a population-based study」として公開された。
インフルエンザなどの急性感染症は、RHRを上昇させ、睡眠と活動のパターンに異変を生じさせるなど、体調に大きな影響を及ぼす。そこで同研究所では、ウェアラブルセンサーを用いて生体データを取得し、そのデータを用いて従来モデルを改良することで、インフルエンザの感染予測の精度を改善した。
研究グループはまず、5つの州における2016年3月から2018年3月までの匿名化された約4万7000人のデータを、ウェアラブルセンサーの一つである「Fitbit」を用いて取得した。また、米国疾病予防管理センター(CDC)から提供された地域ごとの感染患者データを用い、週ごとのインフルエンザ症例数を予測した。その結果、センサーから得られた生体データを用いた場合、予測値と実測値の相関係数が従来の0.84から0.97に改善した。実験対象である5つの州全てにおいて予測精度の改善が見られ、従来モデルより6%-33%と大きく改善した地域もあった。
ウェアラブルセンサーから得られる生体データは、測定が受動的、大量かつ非侵襲であるため、リアルタイムで健康を監視できる魅力的な方法である。さらに、SNSなどから得られる大衆データと組み合わせることで、多くの人口と幅広い地域に素早く対応できる。今後、24時間/365日でリアルタイムの生体データにアクセスできるように改良された場合、インフルエンザ患者数を週単位ではなく日単位でも特定できる可能性がある。
小野賢児
2019年度立命館大学大学院情報理工学研究科修了。在学中は、深層学習を用いた医用画像の解析、研究に従事。医師と共同研究を行っていた。コンピュータビジョン×医用画像に興味があり、医療AIの研究開発に取り組んでいる。2020年度より、電気機器メーカーに勤務。関心領域は、データサイエンス、ヘルスケア。在学中に、シアトル(アメリカ)、大連(中国)、ハイデラバード(インド)へのIT留学経験有り。好きな言語はPython。好きな飲み物は牛乳。