1. m3.com
  2. AI Lab
  3. ニュース
  4. 医用画像を5千万枚収集・解析、課題も-第38回日本医用画像工学会大会レポート

AI Lab プロジェクト医療×AIの発展にご協力いただける方を募集しています

医用画像を5千万枚収集・解析、課題も-第38回日本医用画像工学会大会レポート

2019年9月2日(月)

2019年7月24日から26日まで奈良市で開催された第38回日本医用画像工学会のレポートです。

» 連載1回目から読む

2019年7月24日から26日まで奈良市で開催された第38回日本医用画像工学会で24日、シンポジウム「医用画像ビッグデータとAI開発の展望」が開催され、日本医療研究開発機構(AMED)による「臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業」について、研究開発に参加する情報系研究者らがそれぞれの取り組みを紹介した(同事業の成果報告会はシリーズ『臨床研究等ICT基盤構築・人工知能実装研究事業成果報告会』を参照)。

医用画像を5千万枚収集、解析を進める

同事業は医学系学会として日本消化器内視鏡学会、日本病理学会、日本医学放射線学会、日本眼科学会、日本超音波医学会、日本皮膚科学会が参加するほか、画像解析などで国立情報学研究所、東京大学、名古屋大学、九州大学、奈良先端科学技術大学院大学、中京大学の情報系研究者らが参加し進めている。シンポジウムでは、画像解析などを担う情報系研究者らが取り組みを紹介した。

最初に登壇した国立情報学研究所の合田憲人氏は、同研究所が進める医療画像ビッグデータクラウド基盤について紹介した。「医療ビッグデータ収集のためには、個々の学会だけの取り組みでは限界がある。共通基盤と画像解析技術を共通化する必要があるとして、同研究所では、画像データなどをクラウド経由で蓄積するクラウド基盤を2017年度から運用している。現状は約5千万枚の医用画像が各学会から集まっているという。

次に登壇した国立情報学研究所の佐藤真一氏は、医用画像における画像解析タスクを眼底画像を例に紹介した。佐藤氏によると眼底画像はどの症例でもほぼ定位置で撮影されるなど画像が統一されているため、他の医用画像と比べて解析がしやすいとした。

東京大学の原田達也氏は、日本消化器内視鏡学会と共同で進める、機械学習を用いた内視鏡画像診断支援システムの研究開発を紹介した。医師の臨床での活用に対応した手法を提案して進めているという。また、正常画像は多数あるが、特定の病変の画像を大量に収集するのは難しいという課題に対して、ディープラーニングの一手法である「GAN(Generative adversarial networks)」で異常画像を生成し、その画像を学習に利用することで画像診断支援の精度を向上させる研究を紹介した。

国立情報学研究所のクラウド基盤に収集される医用画像のうち、多くを占めるのが、放射線画像だ。名古屋大学の森健策氏らは、これらのCT画像を用いた研究を紹介した。一方で、クラウド基盤に収集されたDICOM画像は5400万枚に上るが、多くは教師データとして使えるラベル情報がなく、撮影条件もバラバラといった課題も指摘した。

長倉克枝

長倉克枝 m3.com編集部