米食品医薬品局(FDA)のNews Releaseから、IT、ゲノム医療などテクノロジーに関連する情報をピックアップしてお伝えします。
FDAはこのたび、局所麻酔下で実施できる初めての鼓膜換気チューブ挿入システムを承認したと発表した。このシステムは、再発を繰り返す中耳炎治療のために用いられる。局所麻酔下チューブ(Tubes Under Local Anesthesia;Tula)システムには、麻酔薬Tymbion、鼓膜換気チューブ、および鼓膜へのチューブ留置や麻酔薬投与に必要なデバイスが含まれる。
米国立難聴・コミュニケーション障害研究所(NIDCD)によると6人のうち5人の子供が少なくとも3歳前にどちらか片方の耳が中耳炎になる経験をする。もし抗生物質が効かず炎症が起こり続けた場合、鼓膜に短いチューブを留置する外科的処置が推奨されることがある。乳幼児の場合、チューブの挿入は総合病院や手術センターで、全身麻酔下で行われる必要がある。
このTulaシステムは、チューブを診療所内で局所麻酔を利用して患者に挿入することが可能だ。それゆえ、全身麻酔を避けることができる。チューブを挿入する前に微電流を使って鼓膜内に局所麻酔を行う。このシステムは生後6カ⽉の赤ちゃんから大人まで利用が可能である。
FDAは、Tulaシステムの効果を測定するために、222人の小児患者から提供されたデータを調査した。挿入手術成功率は5歳未満と5-12歳でそれぞれ86%と89%だった。もっともよく散見されたミスは術中過程における不適切な麻酔処置だった。Tulaシステムは、局所麻酔にアレルギーがある6か月未満の子供には使用すべきではない。またこのシステムは、鼓膜に穴が開いているなど、何かしらの問題を以前から抱えている患者には禁忌である。
「今回の承認によって、再発を繰り返す中耳炎の治療選択肢として、全身麻酔を必要としない治療法を患者に提供できるようになる。毎年、中耳炎を患い苦しんでいる数百万人の子供たちにとって、安全かつ効果的な治療が利用可能であることは重要だ」と、FDAの医療機器・放射線センター(CDRH)のディレクターでMDであるジェフ・シュレンは述べる。
荒川友加理
1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。