2019年9月13〜15日に名古屋市で開催された第67回日本心臓病学会学術集会の開催レポートです。
9月13〜15日に名古屋市内で開催された第67回日本心臓病学会で15日、シンポジウム「A.Iでどこまで心臓病診療は進むか?」に慶應義塾大学医学部循環器内科教授の佐野元昭氏が登壇し、心電図からカテーテル治療の要否を判断するAI(人工知能)の開発を紹介した。救急に搬送された患者から得られた心電図から高精度でカテーテル治療の要否を判断できたとした。
佐野氏らは今年1月、救急外来を受診した患者の心電図から、AIを用いて、カテーテル治療が必要かどうかを判別することができたと発表、研究成果の論文はPLOS ONEに掲載された(『心電図からカテ治療要否を瞬時に判断、慶應大が開発』参照)。シンポジウムでは佐野氏は、この研究を実施するに至った経緯を紹介した。
佐野氏はQT時間に興味を持ってこれまで研究を実施してきたが、QT時間に最も大きな影響を与えるのが心電計のメーカーや機種の違いであることに気が付いたという。「心電図の自動計測は大幅に見直す必要がある」(佐野氏)。一方で、心電図は2ミリ秒ごとに電圧測定した結果を線グラフの形であらわしたもので電圧の時系列データに過ぎないが、複雑すぎてここから人間には理解できない情報がまだまだあるのではと考えた。その一つとして、「心電図一枚からカテーテル治療の要否を判断する」として、コンピューターに詳しくAIにも明るい当時大学院生だった医師の後藤信一氏とともに研究を始めた。
まず、2012年から2018年にかけて慶應義塾大学病院の救急外来を受診した患者約4万人の心電図データを収集。その48時間以内に実際にカテーテル治療になったかどうかを正解とした。当初は学習データとして心電図データの波形そのものを使おうとしたが、時系列であることを重視したいと、電位変化を数値化し、時系列に並べたものを利用することにした。これを、時系列を保持したまま学習データを扱えるディープラーニング(深層学習)のひとつであるRNN(リカレント・ニューラル・ネットワーク)でデータ全体の7割を学習させた。残りのデータを使って精度をテストしたところ、AUC(ROC曲線下面積)が0.88と高精度で検出することができた。単純比較はできないものの、これは市販の心電計に備わっている自動診断機能よりも高精度という。
長倉克枝 m3.com編集部