東京大学医学部附属病院消化器内科の青木智則氏、山田篤生氏、小池和彦氏らの共同研究グループは、カプセル内視鏡が撮影した画像から多種類の病変を高感度で自動検出する診断用AIシステムを開発した。研究成果は米国内視鏡学会誌『Gastrointestinal Endoscopy』に掲載された。
小腸カプセル内視鏡は患者にとっては負担の少ない検査である一方、画像読影者にとっては自動撮像された1患者あたり数万枚の画像を見逃しなく読影する必要があり、大きな負担となっている。そこで研究グループは、読影作業の軽減のため、深層学習を活用した病変自動検出システムの開発に取り組んできた。研究グループはこれまで、「びらん潰瘍」「血管拡張症」「隆起性病変」「血液貯留」を自動検出(分類)するAIシステムをそれぞれ作成してきたが、本論文ではこれら複数所見を一度に検出できる統合AIシステムの作成と検証を行った。
統合AIの学習・作成において6万6028枚の小腸カプセル内視鏡画像を用い、検証においては379症例(びらん潰瘍94症例、血管拡張29症例、隆起性病変81症例、血液23症例を含む)の病変検出率を確認した。病変を有する患者において少なくとも1枚以上の病変画像を検出することを評価項目とした。その結果、統合AIによる病変検出率は、読影ソフトウェアにすでに搭載されているQuickView mode(画像抽出割合を同じに設定)と比較して有意に高い結果であった(99% vs. 89%)。また病変ごとの検討においても、AIによる検出率はびらん潰瘍100%、血管拡張97%、隆起性病変99%、血液100%であり、QuickView modeの検出率(それぞれ91%、97%、80%、96%)と比較して良好であった。
論文の筆頭著者である青木智則氏は「形としてようやくスタートラインに立てた感覚。実臨床で使うにはまだ特異度が低いので、さらなる精度向上を図りたい」と語る。
宮内 諭 m3.com編集部