近年、ディープラーニングが顕微鏡画像の組織パターンを分析するにあたって有望な結果を示している。 ただし、これらのアプローチを取るには、アルゴリズムを訓練するためのアノテーション画像が大量に必要となる。アノテーションのプロセスは通常、高解像度のスライド画像上で、病理医が注目する領域の輪郭を描くことで行われるが、この作業には非常に手間とコストがかかる。
この問題に対処すべく、サイード・ハッサンプール博士が率いる米・ダートマス・ヒッチコック医学センター、ノリス・コットンがんセンターの研究グループは、臨床的に重要な領域を自動的に学習する新しいディープラーニング手法を開発した。このモデルは、組織レベルでのみのラベルを使用してトレーニングできるため、詳細なアノテーションの手間が削減できる。デジタル病理学におけるディープラーニングの応用を拡大する新たな機会が生まれる可能性のあるこの研究成果は『JAMA Network Open』で公開された。
研究グループは、関心領域にアノテーションされた詳細画像を用いたトレーニングを行わずに、高解像度顕微鏡画像でがん性および前がん性食道組織を識別するための新しいアプローチをテストした。 バレット食道および食道腺がんの検出のためのアルゴリズムを使用したところ、その性能は既存の方法を上回ることが判明した。
ハッサンプール博士はこう語る。「我々の方法は、詳細なアノテーションがないために以前は不可能だった組織病理学画像の分析に関するより広範な研究を促進するだろう。そのようなシステムの臨床展開は、病理医が病理標本をより正確かつ効率的に読む手助けになる。これはがんの診断、予後予測、がん患者の治療にとっても重要な課題だ」。
将来を見据えて研究グループは、他の機関から提供されたデータでもテストし、臨床試験を実施することにより、モデルをさらに検証することを計画している。また、提案されたモデルを、トレーニングデータが乏しい他の種類の腫瘍および病変の組織学的画像に適用することも計画中だ。
荒川友加理
1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。