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「人工膵臓システム」で血糖値をよりよく制御

2020年2月6日(木)

医療現場では、糖尿病患者に対してフィンガースティックや、持続血糖測定器(CGM:Continuous Glucose Monitor)によって頻繁に血糖値測定を行い、高血糖が見られた場合はポンプによるインスリン注入を行っている。しかし、1型糖尿病の患者は、しばしばスタッフの少ない夜間に血糖値が危険なほど低いレベルに低下することがあり、深刻な問題となっていた。

コロラド大学アウシュッツメディカルキャンパスの研究グループはこのたび、「人工膵臓」とも呼べるような「クローズドループ型インスリン注入システム」を開発した。この機器は、連続グルコースモニターを使用して血糖値を追跡し、インスリンポンプを使って必要に応じてインスリンを自動的に送達する、いわば「オールインワン」の糖尿病管理システムである。この研究は「New England Journal of Medicine」上で発表された。

このシステムの基幹となる「Control-IQテクノロジー」は、グルコースモニタリングの情報から、数学モデルに基づいた高度な制御アルゴリズムに基づいたプログラムによって、インスリン投与量を自動的に調整している。 この人工膵臓システムが実際に患者にとって効果的なのかどうかを調べるため、研究グループは14歳以上の1型糖尿病患者168人を対象とし、人工膵臓システム、または手動のCGMとインスリンポンプを備えたセンサー増強ポンプ(SAP)療法のいずれかを使用するよう無作為に割り当てられた。被験者は、2-4週間ごとに研究スタッフと連絡を取り、データをダウンロードして確認された。

その結果、人工膵臓システムのユーザー群では、血糖値の目標範囲である70-180 mg / dLの期間が、1日平均2.6時間のびることが判明した。その一方で、 SAPグループでは、6カ月間変化しなかった。人工膵臓のユーザーは、SAPグループと比較して、高血糖および低血糖、ヘモグロビンA1c、および糖尿病制御に関連するその他の測定で費やした時間の改善も示した。

なお、試験では、両者のグループでデバイスの使用を厳守し、参加者を100%維持したという。研究中、いずれのグループでも重度の低血糖は発生しなかったが、糖尿病性ケトアシドーシスは、ポンプからインスリンを送達する機器の問題のため人工膵臓グループで1件発生した。

この研究によって、コントロールIQシステムを使用した新しい人工膵臓システムは、幅広い年齢層の1型糖尿病患者の血糖値を制御するにあたって、従来の治療よりも効果的であることがわかった。 この研究の論文の共著者であり、米・フロリダ州タンパにあるヘルスリサーチJaebセンターに所属するコバチェフ博士は、「この人工膵臓システムは、従来の方法よりも優れた血糖制御機能をもつ。特に、低血糖の予防に特化した安全モジュールがあり、毎朝正常に近い血糖値で目覚めるために一晩中制御が行われている」と述べる。

荒川友加理

荒川友加理

1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。