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スマートフォンでノロウイルス検出が可能に

2020年1月23日(木)

毎年世界中で約20万もの人の死を引き起こし、米国だけでも約2000万件の食中毒をもたらすノロウイルスは、感染力が強くほんの少しのウイルス量であってもなかなか死滅しない。たった10個のウイルスで人は病気にかかってしまうこともあるのだ。

米・アリゾナ大学Mel and Enid Zuckerman College of Public Healthのコミュニティ、環境、および政策学科の学科長であるケリー・A・.レイノルズ氏らの研究グループは、非常に微量のノロウイルスを検出する方法を、簡単かつポータブル、そして安価なものとして開発することに成功した。研究成果は、米国化学協会の公式ジャーナルである『ACS Omega』に掲載された。

ノロウイルスは多くの場合、水場を介してコミュニティ全体に急速に広がる。少量のノロウイルスを検出するデバイスはすでに存在するが、通常では、数千ドルの費用がかかる顕微鏡、レーザー、分光器の配列を備えた実験室が必要となる。そこで研究グループは、クルーズ船や井戸などの野外でノロウイルスを検出するために、紙、マイクロ流体チップ、スマートフォンなど、従来よりもはるかにシンプルな材料を使用しようと考えた。

チップ上の汚染物質を検出するとき、通常では、サンプル内の光の散乱と反射を測定する。しかし、紙には多くの孔があいており、不透明なので背景が散乱して画像化を妨害してしまう。そのため、非常に低い濃度のウイルス量を検出することは難しい。そこで研究グループは、光の強度を測定するのではなく、蛍光ビーズを数えることにより、ノロウイルスを検出する新しい方法を開発した。

まず、汚染された可能性のある水を、紙のマイクロ流体チップの一端に加えた。一方、テスト群には小さな蛍光ポリスチレンビーズを追加した。各ビーズには、ノロウイルスに対する抗体が付着している。ノロウイルスが存在する場合、いくつかの抗体が各ウイルス粒子に付着し、蛍光ビーズの小さな塊を作成する。

ノロウイルス粒子は小さすぎてスマートフォンの顕微鏡で画像化できない。もちろん、抗体も同様だ。しかし、ノロウイルスが存在してビーズが2つまたは3つ以上結合している場合は、スマートフォンの顕微鏡でも検出できる十分な大きさになる。

その上で、研究者が作成したスマートフォンアプリを使って、画像内の照らされたピクセルの数をカウントする。こうして凝集したビーズの数を特定し、続いてサンプル内のノロウイルス粒子の数を計算する。このとき紙チップを使えば、毛細管現象により、ビーズの塊が紙に沿ってばらけて、カウントしやすくなるという利点もある。デバイス全体の中で最も高価なスマートフォンの顕微鏡は、50ドルもしない。使い方も簡単だ。

研究グループは、「水中におけるウイルスの迅速なモニタリングの進歩は、公衆衛生を守るために不可欠だ。迅速かつ低コストの水質監視技術は、感染症の被害を軽減する革新的ツールになる可能性がある」と語る。

荒川友加理

荒川友加理

1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。