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4K手術用内視鏡・顕微鏡など、ソニーが6年ぶりにCEATEC出展

2019年10月16日(水)

2019年10月15日から18日まで幕張メッセ(千葉市美浜区)で開催中のIT見本市「CEATEC 2019」にソニー株式会社が「Sony’s Technologies x Medical/Life Science(ソニー テクノロジー メディカル・ライフサイエンス)」をテーマに出展した。ソニーがCEATECに出展するのは6年ぶり。ソニーはメディカル事業を「生活の安心・安全への貢献」に関わる重要領域の一つに位置付けており、メディカル関連技術にもソニーがこれまでにイメージセンサーや、AV関連機器、放送機器の開発で培った各種技術が投入されている。

暗所に強い裏面照射型CMOS技術などを活用して低ノイズ高画質の術野画像を実現

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4Kメディカルモニター

ブース展示はメディカルイメージング領域とライフサイエンス領域の二つに大別される。まずメディカルイメージング領域では、手術部位を撮影する術野カメラや高精細なモニターなど手術用イメージング機器を中心として、入力・出力・保存・配信に関する映像ソリューションを、そこに活用されているイメージセンシング技術、3D技術、4K技術、アーカイブなどの要素技術を軸として紹介している。内視鏡を用いた低侵襲手術など、モニターを見ながら行う手術の普及によって、さらなる高画質化が求められているという。

また、ソニー・オリンパスメディカルソリューションズ株式会社(ソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズ株式会社とオリンパス株式会社の医療事業合弁会社)が技術開発した4K2D手術用顕微鏡システム、4K外科手術用内視鏡システム、およびシステムに応用されているイメージング技術も紹介されている。実際に医療用に用いられているもので、これらのカメラヘッド部にはソニー独自の裏面照射型構造のCOMSイメージングセンサー「Exmor R」や、画像処理技術が投入されている。これによって、高感度で暗所でもノイズが目立ちにくい映像を実現すると同時に、自然で忠実な色彩と質感描写を実現している。

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ソニー「Exmor R」搭載の4K術野カメラヘッド

4K3D手術用顕微鏡システムについても、より自然な3D表現のために並列光学機構や、その鏡筒の小型化技術が応用されている。高倍率・3D高画質と小型軽量化の両立を実現した。オリンパス製の従来品に比べると鏡筒部のサイズは95%減となっているという。

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鏡筒を小型化した4K3D手術用顕微鏡システム

有機ELメディカルモニターは、4K放送規格に用いられる映像信号への対応により、広色域の色再現を実現。特に「赤」の再現性が高く、これは微細組織や血管などの識別を容易にし、手術中の正確な判断をサポートできるという。

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自然光の有機EL方式を採用して暗部の映像表現を高コントラストで再現した有機ELメディカルモニター

病院内データの転送についても放送業務分野で培った高効率な映像伝送技術「LLVC(Low Latency Video Codec)」を応用し、低遅延かつ高画質なIP伝送を実現した。ソニーが2019年9月から提供している手術室内外の映像をリアルタイムに一元化して多用途の記録編集・管理・活用を可能にするIPベースの手術映像ソリューション「NUCLeUS(ニュークリアス)」などに応用展開していくという。「NUCLeUS」は様々な機器からの映像を手術室内外にリアルタイム配信して、術野や進捗状況を共有できるプラットフォーム。離れた場所からアドバイスを得るなど双方向のコミュニケーションも可能であり、また、若手医師の育成などにも活用できるという。

このほか医療グレードで手術室で用いることのできるメディカルプリンターも出展されていた。昇華熱転写方式により、1画素の濃淡をコントロールした階調表現力と色再現性の高い印刷が可能。またラミネート加工できるので長期保存できる。

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メディカルプリンター

光ディスク技術を応用した細胞分析装置

ライフサイエンス領域の展示は、免疫や再生医療などの分野で重要性が増している細胞分析/解析に関するソリューションを出展している。細胞数や細胞のサイズや構造、バイオマーカーなどを光学的に分析するフローサイトメーターだ。具体的にはセルソーターやセルアナライザー、ライブセルイメージングシステムである。CEATECでの展示は、特に、光学解析技術と動き解析アルゴリズム技術にフォーカスしたものとなっている。

セルソーターはマイクロ流路を応用したディスポ式のソーティングチップを採用、セットアップを自動化した。ソーティングチップにはブルーレイディスクで培ったマイクロ加工技術が応用されており、高速信号処理により正確なソーティングを実現した。

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セルアナライザー

動き解析にはソニー独自の解析アルゴリズム「MVP法(Motion Vector Prediction Method)」を応用し、業界で初めて染色試薬を必要とせず、細胞の動きを非侵襲で高速に検出できるようになった。具体的には培養細胞の環境を維持したまま、細胞の微細な動きを定量評価できる。

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ライブセルイメージングシステム

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細胞の動きを高速・高解像度で観察できる

森山和道

森山和道 サイエンスライター

サイエンスライター、科学書の書評屋。1970年生。広島大学理学部地質学科卒。NHKディレクターを経て現職。現在、科学技術分野全般を対象に取材執筆を行う。特に脳科学、ロボティクス、インターフェースデザイン分野。研究者インタビューを得意とする。