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CFでのポリープ切除を容易にする新素材

2019年9月12日(木)

毎年アメリカでは1500万以上の大腸内視鏡(CF)検査が行われており、その中の少なくとも20%では消化器専門医によりポリープが切除されている。ポリープの切除は、大腸がんになるのを防ぐ最善策だ。

切除処置を行う際に大腸を傷つけるリスクを減らすため、医師は通常、生理食塩水を病変部位の下に注入し、ポリープを持ち上げる“クッション”を作る。そうすることで切除がより安全にできるようになる。しかし、このクッションは長時間維持することができない。そこで、MITの研究者たちは代替案を考え出した。注入時は液体で、組織に到達すると固いゲルに変化する溶液を使い、より安定的かつ長持ちするクッションを作りだしたのだ。この研究成果は、『Advanced Science』に掲載された。

研究グループが開発したゲルは、普通の状態では半固形だが、力を加えたときに粘度が減少し流動性が増す。つまり、細い針を使って注入する時には簡単に流れ込み、大腸組織の中に入ってしまえば再度固いゲルに戻るのだ。このような性質をもつゲルは様々な種類の物質から作られるが、大腸ポリープの安全な切除処置のため、研究者たちは生体適合物質を二つ組み合わせてゲルを作ることにした。一つはラポナイトという粉末状の添加剤で、化粧品などの製品にも使用されている。もう一つはアルギン酸で、これは藻から作られる多糖類だ。

予備実験のために、研究グループはこのゲルを豚の体内に注入した。その結果、形成されたクッションは安定した状態を1時間以上も維持することができたという。これを使えば、消化器専門医はどんなポリープを切除するにせよ、もっと時間に余裕が持てるだろう。

さらにこのゲルは、構成成分の割合に変化を持たせることで、粘度をコントロールすることができる。それにより、どのくらい長くクッションを安定させ続けられるかが決まる。もし持続時間が長いものであれば、胃酸の逆流を防いだり、満腹感を与えることで減量に用いたりすることができるかもしれない。

研究者たちは、「このゲルはかなり早期に臨床適用が可能になるだろう。3-5年以内には治験を始めたい」と述べる。

荒川友加理

荒川友加理

1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。