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埼玉医大、触覚再現の新型手術ロボ導入、保険診療で実施

2019年9月9日(月)

埼玉医科大学国際医療センターは9月4日、今年5月に新たに薬事承認を取得した新型の低侵襲手術支援ロボット「センハンス・デジタル・ラパロスコピー・システム」を使った大腸手術を実施したと発表した。同システムは術者に触覚をフィードバックする機能があるほか、従来の内視鏡手術に慣れた医師にとって操作しやすい仕様と言う。今年7月に保険収載され、同センターでの手術実施が国内で初めての実施となった。

「センハンス」は腹腔鏡下手術を実施する術者を支援する手術支援ロボットで、術者はコックピットから遠隔で鉗子などを操作する。手術支援ロボット「ダビンチ」と似ているが、もともと遠隔手術を目指したダビンチと比べ、センハンスはより通常の腹腔鏡下手術に近い感覚で手術が可能という。具体的には術者はコックピットで座って操作していても、手術室全体の様子を検知できるほか、遠隔で鉗子などを操作する際に操作する手元への力覚フィードバックの機能がついている。また、術野を撮影しコックピットのディスプレイに表示するカメラは、術者が視線を動かすことで操作ができる。

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センハンスを使って手術を実施している様子(提供:埼玉医科大学国際医療センター)

同日記者会見をした同大常務理事で、同大国際医療センターの前病院長の小山勇氏は、「患者の身体にやさしく、確実に目的を達成できる手術のためにセンハンスを導入した」と話した。小山氏は、病院長だった2017年6月に個人輸入で、同センターに日本で初めてセンハンスを約2億円で購入して導入。また同センターが費用負担し、同センターの医師、看護師、医学工学士らをイタリア・ミラノの施設へ研修に派遣、センハンスの操作や機器の整備などをセンター内のスタッフで実施できる体制を構築してきた。

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記者会見をする小山氏

センハンスは2019年5月に薬事承認を取得したほか、7月には保険収載された。ロボット支援手術としての加算はないが、腹腔鏡下手術98術式について保険診療で実施できるようになった。同センターでは保険診療での大腸手術として2例実施。同センターでセンハンスを使った手術の経験が最も多い同センター消化器病センター長の山口茂樹氏はこれまでで10例実施している。安全を期するために、手術実施の際には、センハンスを使った手術経験が豊富な同大客員教授のディートマー・ステファン氏をプロクターとしてドイツから招聘して実施しているという。

腹腔鏡下手術と同様の使い勝手

これまでロボット手術支援はほとんどがダビンチを利用して実施されていたが、ダビンチはもともと遠隔手術を目指して作られたハイスペックな仕様のため、腹腔鏡下手術に慣れた医師にとっては使い勝手が大きく異なる課題があったという。一方で、現状では多くの術式で腹腔鏡下手術の技術が確立されており、腹腔鏡下手術に秀でた医師も多い。小山氏は「通常実施されている腹腔鏡下手術によりリアルに近づけるためにセンハンスができた」と、日常腹腔鏡下手術に慣れた医師にとってより使い勝手を良くするものがセンハンスだと強調した。

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コックピットでの操作を説明する山口氏。操作する手元には、鉗子が臓器を押したときなどに、力覚のフィードバックがある。

また、センハンスではダビンチと異なり従来腹腔鏡下手術で使用していた器具や周辺の医療機器などをそのまま使えるため、運用コストも低く抑えられるという。また手術前の準備も数分と短い。

同センターでは年間約450件の大腸手術を行い、そのうちの9割を腹腔鏡下で実施しているが、これらをセンハンスに代替可能であるほか、婦人科や泌尿器科、上部消化管などの内視鏡下手術でも実施可能という。

長倉克枝

長倉克枝 m3.com編集部