米パデュー大学ウェルドン校と韓国の漢陽大学の共同研究チームは、無色透明で柔軟性を持つシリコン製ナノニードルパッチを開発した。このパッチを用いることで、薬剤を細胞に直接送り届けることができるという。成果は米国科学振興協会が発行するジャーナル「Science Advances」に掲載された。
論文の最終著者である Chi Hwan Lee 准教授は、「ナノニードルパッチは、生体分子を細胞や組織に送達するための最も低侵襲な方法の一つだ」と述べる。ナノニードルパッチは、シリコンウエハと呼ばれる基板上に無数の微小な針が配列されたもので、皮膚や筋肉組織の間などに装着することで、薬剤や生体分子を細胞に直接送り届けることができる。
従来型のナノニードルパッチは、不透明で硬いシリコンウエハ上に針を配列する必要があったため柔軟性に乏しく、不快感を及ぼすおそれがあった。また、長時間にわたってパッチを体内に埋め込むことも難しかった。
今回の研究によって、シリコンウエハ上に立てたシリコンナノニードルを伸縮性のある半透明なバイオパッチに移行させる方法が確立された。新開発のナノニードルパッチは、正確な用量の生体分子を体内に送り届けることができる。また透明性を持つため、生体分子の送達の経過や細胞の細かい動きをリアルタイムにモニタリングすることも可能になった。
この新しいナノニードルパッチは、悪性黒色腫(メラノーマ)をはじめとする皮膚癌の治療に役立つ可能性があるという。研究チームは今後の展開として、ナノニードルパッチを活用した細胞の微細な動きのモニタリングや、癌組織に対する治療への有効性を検証する計画を立てていると述べた。