カーネギーメロン大学電気・コンピューター工学部の准教授であるメイサム・チャマンザー氏らの研究グループは、超音波を利用することで組織内部の「光学」画像を非侵襲的に撮影する新しい手法を開発した。この方法を用いることで、内視鏡などによる侵襲的な検査が不要となる可能性があるという。研究成果は、光学に関する専門誌『Light: Science and Applications』に掲載された。 生体組織は可視光をほぼ透過させないため、現在の光学イメージング法では深部組織を撮影することはできない。そのため、現在、深部組織疾患の症状を検査・診断するためには、内視鏡やカテーテルを挿入しなければならない。しかしこのたび研究グループは、体内に物理的なレンズを埋め込むのではなく、超音波を使用して体内に“仮想レンズ”を作成できることを示した。超音波を使用することで、組織内の光を効果的に「集束」し、非侵襲的手段ではアクセスできなかった画像を撮影できるというのだ。
音響光学によると、液体を超音波で振動させることで格子定数を制御できるという。そのため、ある周波数を放出することで、特定の波長の光を分光・モニタできる。今回の研究ではこの効果を生体に応用することで、さまざまな深部組織を非侵襲的にイメージングできるというのだ。
将来的には、この原理を応用することで、ウェアラブルパッチのような形の機器を開発可能だという。つまり、皮膚にパッチを貼り付けることで、臨床医は内視鏡のような検査を行う事なく、組織内から光学情報を簡単に手に入れることができるようになるのだ。この技術はどのような組織でも使用可能と考えられているが、最も実現に近いのは、脳組織の内視鏡画像または皮膚下の画像だ。この超音波アシスト型光イメージング法によって到達できる深さの限界はまだ分かっていない。
今回の研究成果を受け研究グループは、「散乱体は常に光学イメージングの障害と考えられてきた。しかし、適切なパターンで超音波を利用することで、散乱体はすぐに透明にできます。この新しい画像技術は、今後5年以内に臨床現場に適用できると考えています」と語る。
荒川友加理
1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。