筑波大学と京セラコミュニケーションシステムは7月12日、14種類の皮膚腫瘍を高精度で識別する人工知能(AI)診断補助システムを開発したと発表した。 この成果は、皮膚科専門誌『British Journal of Dermatology』に掲載された。
通常、AIが画像の識別を行うには、1つのカテゴリごとに最低1000枚の画像を用いた学習が必要であるとされる。そのため、例えば14種類の皮膚腫瘍を識別するシステムを構築するためには1万4000枚以上の画像が必要となる。しかし希少な疾患が多い皮膚疾患では、病理画像を数多く集めることが困難であるという問題点があった。
このたび研究グループは、14種類の皮膚腫瘍に関する約6000枚のデータセットを収集した上で、各々の画像を傾けたり、明るさを変化させたりすることで、1枚の画像から24枚の学習画像を作成した。これらの画像を用いて学習したAI診断補助システムと皮膚科専門医13名とを比較したところ、皮膚科専門医による良悪性の識別率が約85%であったのに対し、AI診断補助システムの識別率は約92%と高かった。さらに、良悪性の識別より難しい14種類の詳細な診断の正答率についても、皮膚科専門医が約60%であったのに対して、AI診断補助システムは約75%であり、AI診断補助システムの方が優れていた。
研究グループは今回の成果について、皮膚腫瘍だけでなくほかの皮膚疾患にも対応できるようバージョンアップを進めるとともに、十分な性能評価を行った上で、数年以内に実際の臨床の現場で使用できるようにすることを目標としているという。
宮内 諭 m3.com編集部