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皮膚がん判別テスト、AIに軍配

2018年6月1日(金)

 経験を積んだ皮膚科医よりも正確かつ迅速に悪性黒色腫(メラノーマ)を発見する人工知能(AI)の開発に成功したとする研究論文が5月28日、英医学誌「Annals of Oncology」に掲載された。このAIを用いることで、不必要な手術を減らせる可能性があるという。

 ドイツ、米国、フランスの研究チームによって開発されたこのAIは、「畳み込みニューラルネットワーク(CNN)」という技術が使われており、10万枚以上の悪性黒色腫および良性のほくろの画像を用いることで、皮膚の病変が良性か悪性か識別できるように学習された。その後、研究チームは、17か国の皮膚科医58人とAIのどちらが悪性黒色腫を正確に判別できるかの画像テストを実施した。テストに参加した皮膚科医のうち、5年以上の経験を積んだ医者は30人(52%)、2〜5年の医者は11人(19%)、2年未満の医師は17人(29%)だった。

 テストは次のように行われた。まず皮膚科医は悪性黒色腫もしく良性のほくろの画像を見せられ、手術する必要があるかどうかといった処置方法を決定するように求められた(レベル1)。その後、画像のクローズアップ画像および、患者の年齢や性別、皮膚病変の位置といった臨床情報を追加で与えられ、処置方法が再度求められた(レベル2)。一方AIは、レベル1の画像のみを与えられた。

 その結果、正確に悪性黒色腫と診断できた割合は、レベル1において皮膚科医が平均で86.6%だったのに対し、AIは95%に達したという。レベル2では、皮膚科医は88.9%を正確に診断し、正答率を改善した。

 論文の筆頭著者であるドイツ、ハイデルベルク大学皮膚科のホルガー・ヘンスル博士は、皮膚科医はレベル2で診断能力を向上させたものの、それでもレベル1の情報しか持たないAIの方が診断能力が高いことから、CNNは皮膚科医よりも検知能力が高いと結論付けた。「悪性黒色腫の診断において、皮膚科医がAIに置き換わることは想定していないが、今後、AIは診断の補助として使われていくだろう」(ホルガー博士)。

宮内 諭

宮内 諭 m3.com編集部