2019年11月11日に日本医師会で開催された、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」の成果発表シンポジウムの開催レポートです。
2019年11月11日に日本医師会で開催された内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」の成果発表シンポジウムで、国立成育医療研究センター理事長の五十嵐隆氏と同病院長の賀藤均氏が登壇し、自動受付・会計や案内の自動化、診察補助としてのAIの活用など推進しているAIホスピタルを紹介した(医療維新『「AIホスピタル」慶應大・阪大など4病院で実装』を参照)。
同センターで進めるAIホスピタルは、自動受付・会計、案内ロボットを活用した案内のほか、診察では音声や画像の自動入力システム、書類自動作成システム、診断補助としての活用を目標としている。また、患者が自宅からスマートフォンなどで受診予約や問診表入力をできるようにするほか、患者がスマホから診療データを閲覧できるようなシステムも目標としている。
AIホスピタルの開発を進めるにあたっての実施体制は、五十嵐氏が研究代表者、賀藤氏が実施責任者を務め、AI推進室を設置。研究の実施は、同センターの研究者が提案する個別研究班の他、SIPのAIホスピタル事業であらかじめ決められているサブプロジェクトを実施するサブテーマ連携班に分かれて進める(サブテーマについては『「AIなしでは医療は難しくなっていく」―「AIホスピタル」成果発表シンポジウム2019開催レポート』参照)。
サブテーマ連携班では、サブプロジェクトAではセキュリティの高い医療情報データベースの構築と、それらを利用した医療情報の抽出、解析技術等の開発を実施 。同センターが取りまとめを担い全国36の小児総合医療施設から成る「日本小児総合医療施設協議会(JACHRI)」所属の医療機関間でDPCデータや病院業務・運営に係るデータを登録、分析するシステムを構築する。
サブプロジェクトBでは、救急外来や集中治療室のデータ管理システムを開発するベンチャー企業であるTXP medicalと連携し、救急外来向けに、音声で電子カルテに自動入力するシステムを導入する。
また、日立製作所との連携では、小児の患者への説明やコミュニケーションを補助するロボットを活用する。小児患者への対応は、米国では「チャイルド・ライフ・スペシャリスト」として専門職が小児病院に配置される。例えば、幼児の患者も、丁寧に説明して本人が納得すれば鎮静剤や麻酔薬なしで検査や治療が可能だ。ただ国内ではこうしたスペシャリストは不足しており、そこでを活用していくとした。例えばロボットが小児患者を検査室へ誘導したり、一緒に検査室へ入ったりして気を紛らわせるなどがある。日立製作所が開発した小型の人型ロボット「EMIEW3」を使って実験中で、すでに小児患者とEMIEW3とのふれあいイベントなどを実施したという。
個別研究班として、同センター独自の研究開発テーマは以下の通り。
長倉克枝 m3.com編集部