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移植用角膜細胞の品質を高感度に評価

2019年9月5日(木)

京都大学と京都府立医科大学の研究グループは、角膜細胞の品質評価を可能とする数値指標を開発した。この品質検査は簡易な観察だけで構成されており、さらに移植したあとの組織の予後も予測可能であるため、より安全な角膜移植手術の一助になるという。彼らの研究結果は『Nature Biomedical Engineering』に掲載された。

角膜内皮細胞は生体内で増殖しないため、治療法としてドナー角膜を用いた角膜移植術に頼る必要がある。2009年、京都府立医科大学の眼科医チームが角膜組織を培養する方法を開発した。 この移植術は臨床試験において非常に有望な結果を示したが、さらに広い範囲での適用に関しては主に二つ問題が残されている。培養した移植用細胞の品質検査と移植してからの組織の予後だ。

通常、培養細胞の品質評価はフローサイトメトリー法を利用して行っている。しかし、一度の評価に約10万個もの細胞が必要なうえ、経験豊富な専門家の観察に大きく頼ることになる。そこで研究グループは、角膜細胞評価の方法に微粒子の相互作用を測定する「コロイド物理」の理論を採用した。

評価は比較的簡単だ。移植前に関しては、培養皿の中にある細胞の顕微鏡画像を、移植後に関しては、眼科検査で撮影された画像があればよい。細胞の品質と移植後の長期的な有効性は、両者とも統一された同じ式で計算が可能だという。

今回の研究成果を受け、プロジェクトリーダーである京都大学高等研究院特任教授の田中求氏は、「私たちの研究結果は、再生医療に関わる物理学者と医師らの協力による努力の賜物だ」と述べる。「今回の研究は将来的に、他の上皮細胞の培養や組織の品質管理にも利用されるだろう」。

(画像クレジット:Kyoto University/Tomo Narashima)

荒川友加理

荒川友加理

1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。