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AI Lab プロジェクト医療×AIの発展にご協力いただける方を募集しています

連載テスト:01:03

2018年7月4日(水)

「一度使ったら手放せない」「これがないと怖くなる」……。人工知能(AI)を使って画像診断を支援するシステムが実用期に入りました。「医療従事者のためのディープラーニング入門」は、日経BP社で「日経エレクトロニクス」などで編集長などを務めた今井拓司氏が医師ら医療従事者向けにディープラーニングの仕組みから応用までやさしく解説する、全5回の連載です。

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 AI(人工知能)を活用して、画像診断支援をする研究が国主導で進んでいる。日本医療研究開発機構(AMED)の研究事業の一環で、日本病理学会、日本消化器内視鏡学会、日本医学放射線学会が取り組む(『AIで画像診断支援、医師不足対策の一助にも』を参照)。

 日本病理学会では大量の病理画像をもとに医師の診断を助けるAI(人工知能)の開発を昨年から開始、2017年12月25日には同学会と連携する国立情報学研究所(NII)が「医療ビッグデータ研究センター」を設置し本格稼働した。国内の協力病院から提供された病理画像を同センターのデータベースに登録し、ディープラーニング(深層学習)によるAI病理画像診断支援システムを実用段階に向上させる計画だ。

 日本病理学会のプロジェクトを進める、東京大学医学部准教授の佐々木毅氏に、本プロジェクトをはじめとするAIによる病理画像診断支援の取り組みついてお聞きした(2017年11月29日にインタビュー)。

昨年度から「AI等の利活用を見据えた病理組織デジタル画像(WSI)の収集基盤整備と病理支援システム開発」に取り組まれています。現状について教えてください。 

 病理画像をデジタル化して取り込むバーチャルスライドスキャナが、大学病院だけでなく市中病院にも普及しています。バーチャルスライドスキャナでデジタル化された病理画像であるP-WSI(Pathology-Whole Slide Imaging)は、このプロジェクトに参加する全国23施設に計約70万症例あります。今年度末までにこのうち約11万症例を、個人が特定できないように処理したうえでNIIのデータベースに登録する計画です。さらに来年度は全体の3~4割を登録します。この病理画像データベースは情報系の研究者や医学系の研究者が広く活用できるようにして、そのうえでAIによる病理画像診断支援システムを開発していきます。

具体的にどのように開発を進めているのでしょうか。

 診断したい病理画像を登録すると、がんか良性かを見極めたり、転移の有無を見極めたりするようなシステムを作るためには、病理画像データだけでなく、「がんの病理画像」「転移のある病理画像」といった「教師付きデータ」が大量に必要です。教師付きデータを作るには、あらかじめ集めた病理画像にこうした情報を入力して加工します。そこで、日本病理学会では若手病理医を中心に、NIIと連携して教師付きデータを作るグループを作りました。集めた病理画像のデータをここで加工し、ディープラーニングで学習させることで、診断支援システムを開発します。まず今年度は、大腸生検と胃生検の病理画像から、がんの有無とグループ分類を自動的にするシステムを作る計画です。

画像診断支援で、病理学会と他学会が連携

AIによる診断支援システムは放射線画像で先行していますが、病理画像ではまだ多くありません。

 そもそも病理画像は放射線画像と比べてデータ容量が大きく、これらを集めて解析するのに手間がかかります。また、病理診断は最終確定診断なので求められる精度が高く、実用的な精度に達していませんでした。診断精度は98%ほど求められるのですが、病理画像診断AIの国際コンテストは現状ではせいぜい9割程度です。これではまだ実用的ではありません。

 ただし、取り組んでいる研究者たちは世界中にたくさんいます。いずれ精度が上がっていくでしょう。そのためには、AIを学習させるための大量の病理画像データが必要です。そこで、私たちはAIの専門家と病理医が連携して、データ加工から一緒に進めています。

 またデータ加工を効率よくするためのツールも一緒に開発しています。例えば、AIに学習させるためには、1枚の病理画像を分割して切り出し約80万枚にするのですが、この切り出しを自動化するツールを作りました。

AMEDのプロジェクトでは日本医学放射線学会と日本消化器内視鏡学会も採択されています。学会同士の連携はあるのでしょうか。

 日本医学放射線学会とは、原発性脳腫瘍の診断支援システムの研究で連携をしています。原発性脳腫瘍は術前にはほとんど診断が決まらず、術中迅速病理診断をしています。そこで、放射線画像を入力すると、病理画像がどうなっているのか推定して出してくれるシステムを試行的に開発しています。術中迅速病理診断はスピードが重要なので病理医が直接かかわらなくてもAIが判定したほうがいいと考えています。病理医による最終診断は手術後にすればよいのです。

 日本消化器内視鏡学会とは、内視鏡検査でポリープがあったときに、その形から浸潤の有無などを推定するシステムを開発できればと思っています。内視鏡治療中に浸潤の有無がわかると、その場で切除してはいけないという裏付けになります。

AIによる医療診断支援は厚生労働省が推進しています。

 医療の中でAI活用のトップに医療画像診断支援が位置付けられています。研究だけでなく、実際に臨床現場で使えるようにするために、AIを活用した医療機器として審査基準ができる見込みです。

「ひとり病理医」を画像診断支援が助ける

病理医としてはどのようにAIを活用していくのでしょうか。

 一施設に病理医がひとりしかいない「ひとり病理医」に特に有用でしょう。病床数●以上の全国●病院中45.3%がひとり病理医です。私自身、過去に6年間、ひとり病理医をやっていました。ひとりだとダブルチェックができないので不安があります。ただ、病理検査数の増加に対して相対的に病理医が不足していますし、多くの病院は病理医2人を雇う余裕がありません。そこで、AI病理画像診断支援システムをダブルチェックとして利用できればと考えています。

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佐々木先生がAIによる病理画像診断に取り組むようになったのはいつからでしょうか。

日本病理学会のプロジェクトが始まる前の2016年から取り組み始めました。AI病理画像診断は病理医だけではできません。病理医と情報系の研究者の方たちと必ず一緒に進めています。

 まず取り組んでいるのが、乳がんのリンパ節転移の有無を病理画像からAIが判別する研究です。センチネルリンパ節生検の病理画像から自動的に転移の有無を判別するツールを作っています。今のところ95%の精度で検出できます。病理画像を入力し、転移があるとアラートをならしてくれるというシステムを想定しています。 

日本病理学会でも若い病理医の先生方にAIのプロジェクトに参加してもらうなど、若手が活躍されています。

 AI医療画像診断支援は、若手医師や医学生の関心がとても高いんです。医学部生の講義で時間があまったのでAIの話をしたところ、講義が終わった後に8人くらいの学生が研究室に話を聞きに来ました。医学生ですが、自分でもディープラーニングをやってみたいといいます。今、アルバイトとしてプロジェクトを手伝ってもらっています。

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