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睡眠時無呼吸症候群の治療効果評価、AIで検証

2019年1月23日(水)

東フィンランド大学、クオピオ大学病院、アールト大学の研究者たちは、人工知能(AI)を使って患者ごとに治療効果を予測することで、それぞれの患者に最適な治療法を特定する手法を開発している。本研究は、『Healthcare Informatics Research』 誌に発表された。

現在、医師が患者への治療の有効性を予測する手段としては、一般的にランダム化比較試験が用いられる。ランダム化比較試験では、患者を無作為に2つのグループに分け、一方のグループには評価したい治療を施し、もう一方のグループには異なる治療を行う。その後、グループごとに病気の死亡率や生存率などを比較することで、治療効果を検証・評価する。この手法は高い信頼性を持つ一方、膨大な時間と労力を必要とする。

今回、研究チームは、AIを使用して過去の多数のモデルを参照し、因果関係から確率を判定するベイジアンネットワークに基づいた処理を行うことで、特定の患者に対する各治療の有効性を予測する手法を開発した。

研究では、睡眠時無呼吸症候群をサンプルケースに取り上げ、複数の治療法の効果を評価した。その結果、同症候群において有効な治療法とされてきた持続的気道陽圧(CPAP)治療は、5.3%の平均改善を示すことが分かった。一方でCPAP治療の効果は、高齢患者(55歳以上)および冠動脈性心疾患(CHF)の患者にはさほど有効でないことが明らかになった。CHF患者では、CPAP治療は死亡率や急性心筋梗塞、脳血管障害のリスク増加と関連していた。

こうした特定の患者に対する治療の有効性を評価する手法は、他の疾患にも適用できるという。将来的には、ランダム化比較試験に替わる治療効果の検討方法としても期待されている。

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睡眠時無呼吸症候群の治療評価のためのベイジアンネットワークをシンプルな図式にしたもの。ノード(点)には各データの変数が、それらの間のアーク(線)には変数による影響を数式化したものが入る。図は、持続的陽性気道内圧(CPAP)の評価結果を示したもの。(C) Olli-Pekka Ryynänen / UEF