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脳卒中患者の心房細動を精密に検知する新システム

2020年3月5日(木)

脳卒中患者にとって、心電図検査を続けることは非常に重要である。もし心房細動が発生した場合、脳卒中を再び引き起こす血栓が形成される可能性があるためだ。このたび、ミシガン医科大学院神経学教授で脳卒中神経学者のデビン・ブラウン氏の研究グループは、大量のテレメトリデータを使用することで、標準の心電図検査よりもさらに一歩踏み込んだ診断が可能となる手法を開発した。「心電図マトリクス法」と名付けられたこの技術は6月10日、循環器専門誌『「Stroke』に掲載された。

医師が常に心電図のチェックを行う事は現実的に不可能であるため、現行のモニタリング技術では、心拍数が高すぎる時などにアラートを発するよう設定されている。その後、医師はこれらのアラートについて、治療が必要かどうか検討を行う。しかしこの段階で心房細動の発生を見逃してしまう懸念が常につきまとっていた。

このたび研究グループは、心電図検査による二次元の信号を三次元のヒートマップに置き換え、表示する「心電図マトリクス法」を開発した。この手法の有用性を確認するため、265人の脳卒中患者の心電図データを解析した結果、260人(98%)で正確に検出できることが判明した。この手法を用いることで、早く正確で直感的な心房細動の検知が可能となり、また、心房細動の偽陽性、偽陰性を共に最小限に留められるようになったという。

また、臨床文書と比較した心電図の陽性的中率は全体で86%であり、心房細動の既往のないサブセットでは100%の的中率を示した。さらにこの心電図マトリクスは、心房細動だけでなく、心房粗動や深刻な不整脈の検出にも有用であることが証明された。

研究グループは今回の結果を受け、 「心房細動は脳卒中患者にとって非常に重要かつ予防可能なリスクファクターである。心電図マトリクス法は、全ての心房細動をオンラインであれオフラインであれ、検出できるようになるだろう。遅かれ早かれ、この手法は臨床応用され、患者の利益のために使われるようになると考えている」と述べる。

荒川友加理

荒川友加理

1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。