米国では毎年、100万人以上の子どもが遺伝子異常を持って生まれている。 遺伝子異常を持つ子どもの約半数は顔に形態異常を伴うが、顔の特徴に異常があるかどうかは出生時にわからないことが多く、小児科医による特定は困難である。 診断の遅延とエラーは、遺伝子異常に関連する死亡率と罹患率に大きな影響を及ぼす。たとえば、最も研究されている遺伝子異常のひとつ、ダウン症候群の場合、訓練を受けた小児科医による検出の平均精度は、米国では64%と低い。そのため、遺伝子異常を早期に検出する方法は非常に重要となる。
遺伝子異常の早期発見を可能にする技術として近年注目を集めているのが、写真による子どもの顔の分析である。 しかし一般的な写真では、補正と照明の問題がある。 3D写真はこれらの問題のうちいくつかを克服することができるものの、子どもの頭蓋顔面の変形を定量化する3Dスキャナーは高価であり、すべての医療機関で利用できない。
そこで、スペインのポンペウ・ファブラ大学の研究グループは、米国のワシントン大学と共同で研究を行い、新しい統計モデルを使用して補正されていない2D写真から3Dの顔面を再構築する新しい手法を考案した。この研究成果は『Lecture Notes in Computer Science』のオンライン版で公開された。
この研究グループが考え出した新しい方法とは次の通りである。まず、複数の2D写真について、統計モデルと2Dの顔のパーツのセットを使用してカメラの位置を推定する。 次に、各カメラの画像平面において3Dの顔面がどのように投影されるかを推定し、2Dの顔のパーツと3Dの顔のパーツの距離を最小化することにより、カメラの姿勢と統計モデルのパラメータを計算し、3Dの顔面を再構築するのだ。
54人の被験者(年齢範囲0-3歳)で3D写真の再構築法を評価したところ、この新しい方法での分類アルゴリズムは、100%の感度と92.11%の特異度で2D写真から3Dの顔面を再構築し、遺伝子異常を特定することができたという。
荒川友加理
1980年、石川県生まれ。イギリス、エセックス大学で言語学を学んだあと、英会話講師に。幼児から大人までの英語教育に従事しながら翻訳の仕事も行う。翻訳分野は日本の旅館やホテルのウェブサイト翻訳、ダイバーシティー&インクルージョンにフォーカスしたニュース記事翻訳、企業のウェブサイトや会社案内動画の字幕吹き替え翻訳など。