ITヘルスケア学会が11月4日に東京都内で開催した「モバイルヘルスシンポジウム2019」に外房こどもクリニック院長の黒木春郎氏が登壇し、昨年4月からオンライン診療が保険診療になったものの、保険診療がほとんど普及していない現状を指摘した上で、「現場で利用しやすい制度の整備」を訴えた(医療維新『オンライン診療「疾患制限を撤廃、医師の裁量拡大を」』を参照)。
黒木氏は千葉県いすみ市で小児科の診療所を開業し、2016年6月からオンライン診療を導入している。人口3万8000人、高齢化率39.8%、年間出生数は200人弱、二次医療圏は50キロ先、自動車がないとなにもできないといういすみ市でのオンライン診療の事例を紹介した。
たとえば、注意欠陥多動障害(ADHD)の12歳男児の場合、対面診療とオンライン診療を隔月で実施しているが、オンライン診療では家庭での様子を見ることができ、それは対面では得られない新たな情報だったという。こうしたことから、「オンライン診療は外来診療とは得られる情報の質が異なる。オンライン診療は対面の代替ではなく、入院、外来、在宅に続く第四の診療形態」と指摘した。
オンライン診療は2018年4月の診療報酬改定で、条件を満たすとオンライン診療料70点、オンライン医学管理料100点が加点されるようになった。一方で、日本オンライン研究会によるアンケート調査では、過去3カ月以内にオンライン診療を行った医療機関の6割が一回もオンライン診療料を算定していない。黒木氏は、その要因として疾患の制限など算定要件の厳しさを指摘した上で、「課題は保険診療でのオンライン診療の普及。疾患の制限をなくすべきだ」とした。
長倉克枝 m3.com編集部