東京都内で開催中の医療機器の展示会「Medtec Japan 2019」で3月18日、「IoT・AIと今後の医療機器」と題したセミナーが開催され、医師として働きながら起業し、医療分野での人工知能(AI)利活用に取り組む医師が登壇し、それぞれの取り組みを紹介した。
アイリス株式会社代表取締役社長の沖山翔氏は救急医などを経て、2017年にアイリスを創業。同社ではインフルエンザ検査向けに、AI搭載内視鏡カメラの開発を進めている(沖山氏のインタビュー記事は『「匠の技」でインフルエンザを迅速診断』、『今のAI技術の先には、アートとしての「医療」はない』)。沖山氏は、暗黙知が多く属人的になりやすい医療の技術を、AIを用いて広く共有化する取り組みについて紹介をした。
インフルエンザの検査は簡易検査キットの利用が一般的だが、早期発見ができないこと、検査精度が高くないことなどの課題がある。一方、インフルエンザ患者には発症直後から喉に腫れ物「インフルエンザ濾胞」ができる特徴があるが、熟練した医師でないと判別が難しい。
一方、「こうしたパターン認識は深層学習(ディープラーニング)が得意なところ」(沖山氏)として、アイリスでは、内視鏡カメラで喉を観察し、深層学習(ディープラーニング)で「インフルエンザ濾胞」を判定するAIの開発を進めている。こうした技術によって、熟練した医師でなくても、高い精度で早期にインフルエンザを検出できるようになるという。
医療分野でのディープラーニングなどのAIを活用した研究開発は現状、多くが画像診断支援などの検査の支援として進められている。沖山氏は、こうした分野は今後確実に進むとしながら、一方で「今後は検査ではなく診察技術でのAI利用も進む。アイリスではそこを推進していきたい」と話した。
サスメド株式会社代表取締役社長の上野太郎氏は睡眠外来で不眠症治療に取り組む一方で、2015年に起業し、不眠症の「治療用アプリ」の開発を進めている。上野氏は、「治療用アプリ」などの同社の取り組みを紹介した。
不眠症の治療には、認知行動療法が睡眠薬処方と比べて効果があり、また効果も継続するとのエビデンスがあり、米国睡眠学会のガイドラインでは不眠症の第一選択肢が認知行動療法となっている。一方で、認知行動療法は医療者の負担が大きく国内での普及は進んでいない。
そこで同社では、アプリを活用して認知行動療法を実施する「治療用アプリ」を開発している。こうした「治療用アプリ」は、例えば糖尿病管理アプリが米食品医薬品局(FDA)の承認を得るなど、従来の治療薬などに加えて、新たな治療オプションとしての導入が進みつつある。
同セミナーでは、ほかに、内視鏡診断支援AIの開発を進める株式会社AIメディカルサービス代表取締役でただともひろ胃腸科肛門科院長の多田智裕氏が登壇し、開発した内視鏡診断支援AIの臨床研究について紹介をした。
長倉克枝 m3.com編集部