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AI病理検査で前立腺がんの進行を予測

2018年11月8日(木)

 マウント・サイナイ・アイカーン医科大学(旧マウント・サイナイ医科大学)は、人工知能(AI)を用いた病理検査によって、手術後の前立腺癌の再発や進行を正確に予測することができると発表した。この研究成果は、Nature Prostate Cancer and Prostatic Diseases誌に掲載された。

 米国癌学会によると、アメリカ人男性の癌による死因の中で、前立腺癌は肺癌に次いで第2位だという。手術後の経過は一般的に良好だが、手術後の患者のうち25〜30%に癌の再発がみられる。 個別化された医療の提供のためには、癌の悪性度の評価と正確なリスク分類が不可欠である。

 「Precise MD」は、AIを用いて臨床データからリスク分類を行う病理プラットフォームだ。タンパク質バイオマーカーと画像解析を統合するアルゴリズムを適用することで、前立腺癌の予後評価のために伝統的に使用されてきた「グリーソン・スコア」という評価システムを自動化する。

 研究チームは、前立腺および周辺組織を切除する「前立腺全摘除術」を受けた590人の患者の癌組織サンプルを分析するために、Precise MDを使用した。その結果、グリーソン・スコアや前立腺特異抗原(PSA)検査など従来の評価方法を用いた場合と比較して、Precise MDは癌の進行度をより正確に予測した。また、病理学者の肉眼による評価よりも正確な予後予測を可能にしたという。

 この検査によって、当初は中程度リスクと判定された患者のうち58%が低リスク患者に、42%が高リスク患者に再分類された。このように的確なリスク分類を行えば、高リスク患者に対して、再発予防を目的とした抗癌剤治療や放射線治療がより適切に行える可能性がある。

 前立腺癌基金の副会長兼最高科学責任者であるハワード・ソウル博士は「前立腺癌の進行度評価における機械学習システムの導入は、個別化医療の実現に迫る重要な一歩を踏み出している」と述べた。